一週間前の出来事 12
跳躍したチンの身体が真っ二つに裂け、中から食虫植物のツタが出現し、黒猫を絡め取る――かに見えたが、猫は高速でバックステップを繰り返し、事なきを得た。
危なかった。
初見での襲撃を見抜けなければ、捕獲されていたかも知れない。
「こいつは驚いた! 魔界の悪魔とは、体内に魔物を飼っているものなのか?」
「左様、高位の魔神ほど、複数の魔物を寄生させているのだ!」
元のチンの姿に戻ったグラーシャ・ラボラスが、ドヤ顔で説明する。
「何のためだ!?」
黒猫には、魔神が魔物を寄生させる理由がわからない。
「魔界とは、常に命を狙われる下剋上の世界! ゆえに体内に寄生させた魔物や悪魔などに、宿主が危険な時は警告させたり、戦闘に参加させたりしておるのよ!」
「ほう、魔界とはやはり、物騒な世界なのだな」
「ゆえに、わしら魔神は体内に魔物を飼う」
「フッ、精々寄生虫に身体を乗っ取られぬことだな」
「案ずるな。わしが寄生させておる食虫植物デアボリカとの相性はバッチリよ。そして、猫よ。これを食らえ!」
チンが大口を開け、火炎を放つ!
悪魔が放つ火炎の吐息なので、さしずめデーモン・ブレスと言ったところか。
攻撃を予測していたルーは、ブレスを難なく回避する。
「火炎も吐くか。案外、スキルが多いのか」
余裕の黒猫を前に、グラーシャ・ラボラスがニヤリとした笑みを浮かべる。
「〈ボタニカル・バインド〉!」
ルーの背後に忍び寄っていたデアボリカのツタが、黒猫の首と四肢を拘束する。
「しまった! バインドかっ!?」




