少年バエル 11
ギュゾインの最強の手駒である、ダーク・エアリアルが消滅させられた。
本来なら、細胞の欠片さえ残さぬよう、バエルを切り刻むはずだった。だのに、蓋を開けてみれば配下の下級悪魔の軍団は壊滅、頼りの闇精霊も奴の敵ではなかった。
そもそも、幾千幾万もの悪魔らが跋扈する万魔殿を、一人でうろついているのが異常なのだ。
まだ、幼い少年の姿の悪魔に、気を許しすぎていたのかも知れない。
いや、これは相手を侮ったギュゾインの負けである。
ギュゾインは背中の翼を広げると、脱兎の如く逃げ出した。
「へぇ、僕から逃げられると思ってるんだ」
バエルは野球ボール大の、暗黒の球体を投げる。それは狙い過たず、ギュゾインの右の翼に穴を開ける。
よろめく逃亡者に、追い打ちの二つめの球体が左の翼を貫く。
バランスを失ったギュゾインは地上へと落下。
右手で魔力弾を放とうとしたギュゾインが、違和感に気づく。何と、彼の右手はすでに存在していなかったのだ。
次いで、身体の中からボコンという音が聴こえた。それらは次第に増えてゆき、気がつけばギュゾインの身体は七割が虫食いだらけとなっていた!




