雷火の爪撃 2
「来たな。エリゴール、ベリス」
召喚された双翼の騎士の二人は、辺りを見回す。
そこは、荒野を模した空間で、エリゴールらのいる場所は高台になっている。眼下には、一万を超す軍勢。殺気立った悪魔兵らは、怒号や歓声を上げ続けている。事態が飲み込めぬ二人は、目の前のルキフェルに答えを求めた。
「ルキフェル殿、これは!?」
エリゴールが問う。
「一体、どういうことなのだ!?」
ベリスも、理由を知っていそうなルキフェルに問うた。
ルキフェルは低く通る声で、
「これより貴様らは、私の配下となる。まずは、この一万の敵対者どもを血祭りに上げよ!」
サタンの死後、次代の魔界を牽引するに足る人物の候補として、ルキフェルは適材だ。
が、ベルゼビュートにバールゼフォン、それに人格者であるマルコキアスなど、仕える魅力ある人物は多数に上る。
「ずいぶんと、急な話ですな。――我らはルキフェル殿に仕えるのは構わぬ。が、貴殿は仕えるに足る強者かどうか示してもらわねば」
エリゴールが愛剣、ダインスレイフを抜く。その隣りでは、ベリスが長槍アリオクを構える。
「フッ、戦闘狂どもめ。本来の主を忘れて、愚かにも楯突くか。良かろう、私が誰だったかを思い出させてやる」
ニヤリとルキフェルが笑った。
だが、彼はこの状況を楽しんでもいた。永い歳月を生きる悪魔にとって、退屈を紛らわす出来事は、いつでも大歓迎なのだった。




