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ナンバーズの戦い 16
「妾がウヴァル卿に心を向けるなど、ありえぬな」
「あなたはパイモン卿を哀れんでいるだけだ!」
と、語気強くウヴァル。
「そうではない。夫の器の大きさに傾倒しているだけじゃ。見よ! これをっ!」
ゴモリーの顔半分を隠していたレースが、ひらりと舞い落ちた。
そこには火傷で醜くなった彼女の半面があった。
「この火傷でただれた妾でも、パイモンは愛してくれる。これが真実の愛でなくば、何と言おう!」
ウヴァルは、ゴモリーの醜悪さに眉をひそめる。
「なるほど。確かに、真実の愛ですな。私では、夫人を愛せない。だが、これで遠慮なく、あなた方を倒すことが出来る」
「ちなみに、この火傷はフラウロスと戦った時に負った傷だ。フラウロス――貴様には、感謝もしているが殺したくなるほど、憎らしくもある。因縁の相手同士、場所を替えて戦おうかっ!」
ゴモリーが指をパチリと鳴らす。
彼女の指先には、目に見えない極細の魔法陣が彫ってある。
それを擦り合わせることで、ゴモリーに与えられた空間に転移が可能なのだった。




