ナンバーズの戦い 13
「これはこれは、誰かと思えばゴモリー公爵夫人では、ござらぬか」
ふいに、廊下前方から歩いてくる人影が二つあった。
床は下級悪魔の死体だらけだが、ゴモリー同様、その悪魔はフロートの魔法で自身らを浮かせていた。
「……ウヴァル卿と、フラウロスか」
ゴモリーは軽く舌打ちし、突然の邂逅に顔をしかめる。
ウヴァルと呼ばれたのは、眼鏡をかけたラクダの獣人で、白いゆったりとした服に身を包んでいた。目には好色の色があり、ゴモリーの肢体に釘付けになっている。
一方のフラウロスは、赤い豹の姿で現れていた。
ウヴァルの序列は47位で、フラウロスは64位だ。この組み合わせは、サブナックやビフロンズのような友人関係ではなく、ウヴァルに決闘を挑んだフラウロスが敗北して、真の名を訊かれ使い魔となったのであろう。
真の名を知る者は、相手を隷属させることが可能なのだった。
ゆえに、主だった悪魔の真の名が記されたアッピンの本には、どれほどの価値があるか知れようというものだ。
自称・魔界最強の悪魔ミシャンドラは、その価値も知らずに赤の書を盗み出し、バールの軍勢に追われる破目になるのだった。




