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幕間――奪いし者、奪われし者 16
「ちょっと、待つだ!」
その時、遥か上空からなまった声が聴こえた。
グフである。
蒼い毛並みのグリフォンは、怒りに全身の体毛を逆立てている。祖父の動向が気になったグフは、グリフォンの谷を抜け出し、ベルゼビュートらが顕現した場所へと駆けつけた。
「グフ!? 来ちゃいかん。早く、帰れ!」
ガルフォンが珍しく、声を荒げ孫を叱責する。
だが、その声も右翼を血だらけにした祖父の姿を見たグフの耳には届いてはいなかった。
「オラのジイちゃんを傷つけただな! オメーラ、許さねえぞ!!」
怒りに燃えるグフの体毛が、さらに赤へと変色してゆく。
「ほう、混じりもののグリフォンとは珍しいこともあるものだ」
そう評すベルゼビュート。
変異種のグリフォンの細胞にも興味はあるが、今回は純血種のグリフォンからのゲノム摂取の方が良いだろう。
幼体と思われる細胞から得られるスキルに、金髪の悪魔は不安を感じた。
ベルゼビュートの特殊スキル、コピーキャットは強い個体の能力が反映されるのだった。




