幕間――八大魔王衆 11
ダンタリアンは、百面相の侯爵と呼ばれている。
それは、ただ単にマスクを付け替えるだけの異名ではない。
かぶりを振ったダンタリアンの身体が、神なる鷲・ガルーダへと変貌してゆく。
そう、ダンタリアンはつけたマスクの人物や幻獣などに変身する〈プリテンダー〉というスキルを有していた。
だが、このスキルは対象になりきる代償として、一週間の寿命を要求するのだった。
(まったく、高くつくギフトであることよ!)
ダンタリアン扮するガルーダは、羽根をダーツの矢に見立て、散弾の如く発射する。
逃げ惑うブロケルの左足を矢羽根がかすめる。
「痛っ!」
迦楼羅化したダンタリアン――ガルダリアンは、図書館内を優雅に飛び回り、ブロケルを追いつめてゆく。
反撃にブロケルは水を圧縮させたアクアカッターを飛ばすも、迦楼羅の羽根の一振りで、相殺されるのだった。
使い魔はアテにならないし、スイーツで得た魔力も底をつきそうだ。
(あれ、あたし、詰んでね!?)
一応、護身用に短刀クトネシリカを持ってはいるが、ブロケルは近接戦闘が苦手だ。
得意なのは、パラソルガンでの遠距離からの狙撃。
とは、言っても腕前は、ゴルゴタの丘の13段目の階段のあの方とは、比べるべくもない。
万策尽きた。
後は、なるようになれ。
ケ・セラ・セラってか。
『助けてやろうか?』
ふいに、ブロケルの耳元で誰かの声が聴こえた。
背後を取られた!
後ろを振り向くも、誰もいない。
「ユーレイ!?」
ブロケルは両腕を掻き抱いた。
ゴースト的な存在は、超苦手なのだ。
『違う。違う。オレは死んだ悪魔の残留思念の一つさ』
「残念死ねん!?」
『ズコーッ!』
悪魔の残留思念は、ズッコケるのだった。




