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ゾルトロス 2
魔獣オルトロスは、魔界に生息する双頭の魔犬である。
高い攻撃力を持ち、火炎のブレスを吐くことから使い魔として人気がある。
が、気性が荒く、テイムしようとして片腕を失くすなどの事例が後を立たない。
そんな、オルトロスの中でも変異した種がゾルトロスである。
この種は双頭で生まれてくる時、母親の胎内で栄養を過剰に吸収し、単頭で生まれてきたものがゾルトロスと呼ばれる。
変異種は通常種より、高い攻撃力を有している場合がほとんどであり、魔力も段違いに多かった。
その姿は優美で禍々しいとされる。
というのも、頭部は羊が如き巻き角で、体躯は獅子に尾は蛇であり、さながらキマイラを連想させる。
体毛は赤と黒が奇妙な紋様に見え、爛々とした琥珀の眼は、地獄の番犬ケルベロスを想起させた。
だが、その獣は孤独だった。
早い内に、巣を追われ、兄弟にさえ殺されかけた。
が、蓋を開けて見れば、返り討ちで、逆に兄弟の喉笛を裂いて、生き残っていたのはゾルトロスの方であった。




