ブロケル
ぐりもわーる辺境伯領――
その辺境の森に、あたしは捨てられていた。
ブロケルという名札のみを残して。
この森には、半人半魔や魔力量が少ない子が良く捨てられる。
かくいう、あたしも後者だ。
物好きにも拾ってくれたのは、フォルカスっていう白いヒゲのジジイだった。
あたしら捨て子たちは、フォル爺に拾われなければ死んでいただろう。
生存競争の激しい魔界では、魔力が少ないことイコール死亡が確定しているのだ。
半人半魔が捨てられるのは、差別されているのと下等な人族と交わったというレッテルを貼られ、悪魔族から村八分にされるからだ。
かと言って、自身の子を殺すまでは冷酷ではない。
生存のチャンスを与えたという理由で、彼らは捨てられてゆく。
血族を手にかけるのは、よほどの理由がなければならない。
魔界に血族の聖塔があるのは、サタンが魔族を増やし、天界に反抗するためである。
ゆえに、魔界では血族殺しの罪は重い。
確かに、捨てられたことによって生存の確率は上がった。
何でも、フォル爺は捨て子を拾っては育てているらしい。
奇特なジジイも居たもんだ。
フォル爺は、『その行為が無駄に思えようとも、善意の種を蒔き続ける』らしい。
あたしには、ヨクワカラナイ。
けど、あたしはフォル爺や、お兄ちゃんらと一緒なら、それで良いんだ。
お兄ちゃん――って、誰だったけ!?




