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恋獄、サルガタナス
誰かに、恋したことがあるだろうか?
誰かを愛し、眠れぬ夜を過ごしたことは。
私こと、サルガタナスにはある。
相手は、スカル・キャッスルの城主で、魔界ではクリムゾン・エンプレスと呼ばれている。
そう、魔界の大公アスタロトだ。
私は彼女に恋をしている。
この片想いは、二千年ものだ。
熟成された極上のワインにも匹敵する。
告白する勇気がないわけではない。
その行為が徒労に終わると知っているから、行動に移さぬだけだ。
アスタロトの眼中には、魔界の玉座しか見えていない。
残虐で冷酷で、移り気な我が女神。
いつかは、彼女をひざまづかせたい。
それが、私の野望――
鞭で全身を打ち据え、首をしめながら愛をささやく。
それとも、いっそのこと四肢をもぎ取り、箱の中で飼おうか。
この狂おしい愛情を隠しながら、アスタロトの友で居続ける自信はない。
逆に、彼女の足に踏まれたり、首をしめられるのもアリだな。
どんなプレイも受け入れるから、アスタロトよ――私の物になりなさい!




