幕間――剣帝と将軍 8
ベールゼブブのジャケットを形作っていた体長ニセンチほどの蝿の群体が、かすかに流血した親衛隊の一団に襲い掛かる。
それは、ただの蝿ではなくピラニアの歯を有した流血に酔う捕食者の群れであった。
まず、ベールゼブブの付けた傷に蝿の集団が集り、ピラニアの如き強靭な歯が肉を噛みちぎる。
血液臭に興奮状態となった群体は、喉笛を裂き、眼球を抉り、口腔内から内蔵へと至り、交尾し、卵を産みつける。
瞬時に孵化した蛆虫は、ありえないスピードで成虫となり、周囲の肉壁を喰らいつくす!
ピラニア蝿は肉を喰らいつくすと、白骨のみを残し、新たな獲物を求めて飛び回る。
わずか数分で五十数体はいた、親衛隊が半数ほどに減らされた。
「どうした、ハゲンティ。自慢の親衛隊は機能していないようだが?」
他の悪魔も反撃に出るが、対象が小さすぎて魔法では仕留められず、物理攻撃に出た悪魔は、拳にまとわりついた蝿どもに一瞬の内に骨だけにされるのだった。
勝ち目のなさを悟った悪魔が、逃走を試みるもアキレス腱に喰らいついたピラニア蝿が逃がさない!
阿鼻叫喚の地獄絵図がそこには、あった。
まるで、地獄の閻魔と化したベールゼブブが下した裁きであるかのように。




