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幕間――剣帝と将軍 6
「これはこれは、誰かと思えば〈青蠅殿下〉ではございませんか!?」
ハゲンティがベールゼブブを皮肉る。
青蠅殿下とは、まだベールゼブブが72柱の魔神ですらない頃の、未熟な時期につけられた蔑称の称号である。
虚無回廊内は、ハゲンティの親衛隊と思われる五十数体の悪魔がひしめき合っていた。
(なめられたものだな。ハゲンティめ、序列48位がどんな立ち位置か忘れているようだ。一つ、熱い灸をすえなければなるまい)
「家畜くさい臭いがすると思えば、ハゲンティ――貴様だったか。取り巻きを引き連れて、何の用だ?」
漆黒のスーツに身を包んだ、ベールゼブブが訊いた。
ハゲンティはギリギリと歯ぎしりしながら、ベールゼブブをにらみつけた。
「蝿の王様如きが、魔王衆とは笑わせる!」
「フッ、蝿は疫病と死の象徴たる存在。貴様如き三下では、エクロンの神の偉大さを感じとることすらできまい」
ベールゼブブはハゲンティを見下すように笑った。
激昂したハゲンティが親衛隊らに、ベールゼブブを抹殺するよう指示を出す。
「構わぬ。ベールゼブブを殺ってしまえ!」




