幕間――奪いし者、奪われし者 2
アベル草原に瘴気が立ち込める。
大きめの赤い魔法陣から現れい出たのは、ベルゼビュートと共の二人だった。
オセは以前にも人間界に来ており、座標を妖精界に設定することが容易になっていた。
一度、人間界に召喚された悪魔は、魔法陣のゲートでの行き来が容易になる。
いかなる力が働いているのか分からぬが、転移について耐性が着くようだ。
これが一介の悪魔が自ら、人間界に乗り込もうとすると座標がランダムになり、時空の狭間に取り込まれたりする。
神によって創られた結界なので、招かれざる客は弾かれるシステムになっているのだ。
かつて、オセは人間界の宮本武蔵に喚ばれ、人間界の地を踏んだ。そして、双剣の極意を彼から得た。
獣人系の悪魔は武に対して、執拗な執着を見せる。魔法系のギフトが発動しにくい分、剣技に惹かれるのであろうが。
「ビュート様ぁ、こんなネイルサロンも無いような、ティル・ナ・ノーグの田舎に何の用ですかぁ!?」
普通に妖精界にネイルサロンは存在しない。人間界限定なのだが、ネイル愛のレオナールには関係ない。
「俺様は、グリフォンの飛翔能力を手に入れに来た!」
ベルゼビュートは相手の体細胞から、その個体の持つ能力を獲得することができる。
細胞摂取型の、珍しいギフトと言えるだろう。
ドラゴンと肩を並べる魔獣グリフォン――その強力な能力は、ベルゼビュートをさらに高みへと押し上げる一助となるだろう。
「確かに。グリフォンの機動性があれば、かなり戦闘を有利に運ぶことができますな」
ベルゼビュートの着眼点にオセは唸る。
彼ならば、天下を取るだろう。
何しろ、生まれついての悪魔のエリートなのだから。
ベルゼビュートは、ベールゼブブのフランス語読みです。
オセの双剣は、サブナックが刀なので被らないようにしました。
ゲーム、女神転生のオセも双剣だった気が。
双剣の名が、ヤグルシとアイムール。本来はバビロニアのバアル神の武器なのかな。
サブナックが和な悪魔なので、オセは洋な感じにしたかったのかなと。契約者が宮本武蔵の時点で、和要素が出てきてしまった。
莫耶と干将なども考えましたが、現状で様子見。
レオナールのギフト、ラスティ・ネイルはカクテル
から取りましたけどね。




