幕間――大悪魔アスタロト 3
「して、エリザベートよ。これほどの大掛かりな儀式を行使して、私に何を望む?」
血まみれのバスタブから出たエリザベートは、無造作に赤いバスローブを巻きつけ、私の元へ歩いて来る。
「我が欲するは、永遠の若さと赤子のようなみずみずしい肌!」
なるほど、美に取り憑かれた年増の戯言か。
永遠の若さなど、どこにも存在しはしない。
我ら悪魔は例外だが。
「そなたは十分に美しいと思うが?」
決して、醜くはない。
だが、心の汚れがエリザベートに現れている。
「世辞は良い。分かるのだ。自身が醜く、老いさらばえて行くのが。人の身では、どうにもならぬ。ゆえに、悪魔――そなたを喚んだのだ。私の魂と引き換えに傾国の美貌を!!」
「我が名は、アスタロト。エリザベート――貴様の願い、叶えてやろう」
叶えてやろう。
悪魔の流儀で。
「本当か、アスタロトとやら? 私に世界一の美貌を与えてくれるか!?」
「もちろんだ。貴様が、相応の代価を払うなら、美貌だろうが金銀財宝だろうが、思いのままだ」
ニヤリと私は笑う。
人間を手玉にとるのは、面白い。
口約束をちらつかせるだけで、その気になる。
愚かで、愛すべき人間どもよ。
アスタロトとの契約は、高くつくと知れ!




