幕間――鬼句一文字 5
「サブナック――別に、オレはいつ死んでも構わねぇんだ。それより、せっかくの業物――解説だけは、しといてやる」
「むう」
サブナックは、納得したわけではない。
刀や、あらゆる剣のメンテナンスもイルマリネンが居れば容易いことだろう。
「この刀、菊一文字にはオレのすべてを詰め込んだ。銘を変えて、鬼句一文字としよう。コイツの刀身には、雷獣レベンドーラの角と、ファイヤードレイクの牙を溶かし込んで、竜の血で鍛え上げた一品だ。雷と火炎のニ属性をデュアルで使いこなせる優れ物だ」
「凄いな――まさしく、鍛冶の神にしか成し得ぬ技だ」
鬼句一文字の刀身に、サブナックは魅入った。
「サブナック――オレが死ぬのは構わない、が、一つ伝言を頼みたい」
「もちろんだ、イルマリネン殿。伝言の一つや二つ、容易いものだ」
「ティル・ナ・ノーグにオレの娘がいる。名前は、イルマ――銀髪で、おかっぱの髪をしている。その娘に、父親らしいことを全然、やれてねえんだが――」
「待たれよ、イルマと言ったか?」
「ああ。人間だった母親が死んで、少しの間、育てていたんだが、成長する度に母親に似てきて、つい遠ざけちまった……」
「貴殿は、その女性を深く愛していたのだな。段々と、彼女に似てくる娘を見るのが辛くて遠ざけた、と」
「ああ。イルマには、すまないことをした。謝罪の言葉だけでも届けてくれるか。すまなかった、と」




