一週間前の出来事
「それで、俺を探していたようだったが、何か用でもあったのか?」
京子にかけてあったマントを使ったアイギスを解除するルー。
「あんたに――ルドルフにお礼が言いたかったの」
「ちょっと待て、ルドルフとは俺のことか!?」
黒猫が自身を指さす。
今は猫妖精モードなので、人間のように手足の指がある。肉球つきの。
「そうよ! 黒猫と言えば、ヤマトかタンゴかルドルフに相場が決まってるのよ!」
「そ、そういうものか!?」
京子の妙な迫力に、若干引く黒猫。
リーズのような趣味・嗜好があればルーとしては遠慮したい。
「わかったら、とっとと聖城学園一頭の悪い私にもわかるように、あんたの正体を教えなさい!」
ルーは一瞬、考え込む素振りを見せる。
「教えても良いが、君の記憶を消す羽目になるぞ?」
黒猫はサラッと恐ろしいことを言った。
この猫の姿をした妖精は、ひと一人の記憶を容易に消すことが可能なのだ。
「それでも良いわ。私はあんた――いえ、あなたの正体がめちゃくちゃ知りたいのっ!」
命の恩猫に対して失礼と思ったのか、京子は口調を改めた。
「おかしな娘だ。記憶を消されても真実が知りたいとはな」
「消されなきゃ、その方が良いけど――あんたの方がおかしいからね。フツーの猫はピアスなんてしないものっ!」
ルーは衝撃のあまり、固まってしまう。
が、気を取り直し、首元の赤いペイズリー柄のスカーフからメモ帳とボールペンを取り出す。
「そうか! 人間界の猫はピアスをしないのだな! 盲点だった。メモっておこう。それにしても、この俺のオシャレが仇になるとは。まだまだ、修行が足りんな」
良くわからないが黒猫には、多少残念なとこがあるらしいと感じた。
二足歩行の四次元的なスカーフを持つ黒猫に、京子は未来から来た猫型ロボットを連想する。
おまけに、巨大な目玉の化物まで現れるとは。
「あー、もう頭の中がこんがら童子!」




