幕間――八大魔王衆 5
「バールゼフォンに取り入ろうと、待ち構えていたようだな」
と、バルバトス。
「秘密を知られたからには、殺してしまえ。不運な悪魔め。恨むなよ、貴様がこの場に居たからには処分せねばならぬのでな」
ミノタウロスは一目散に逃げ出した。
美髯の狩人は、剛弓アンフィスバエナに矢を番える。
「貴様には、人生の教訓を教えてやろう」
バルバトスは目算で、対象との距離を量る。
約、二百メートルと言った所か。
これぐらいの距離ならば、身体強化を使わずとも対処はできる。
「見ざる!」
番えた二本の矢は狙い過たず、ミノタウロスの両目に突き刺さり、血が流れ出す。
「ギャアアア!」
ミノタウロスの絶叫に、バルバトスはさらに追撃の手を緩めない。
「言わざる!」
アンフィスバエナから新たに放たれた矢は、牛頭の悪魔の口内を蹂躪する。
「ゴボッ!」
口からもおびただしい血が溢れ出し、ミノタウロスの身体が傾ぐ。
「聞かざる!」
牛頭が倒れる寸前、貫通の魔法が掛かった矢が右耳から左耳を貫いた。
ほんの数秒の速射で、ミノタウロスの悪魔は絶命した。
魔界のロビン・フッドからは逃げられない。
ギフトを持たぬ下級悪魔ならば、なおさらだ。
「口封じも大事だが、正体を気取られぬように立ち回るのだな」
「余に、説教するか? 貴様とて、単独行動が多く、我らと足並みが合っていないではないか。ベリアルのように追放されたくなければ、バール・バトスとしての仕事を果たすのだな!」




