幕間――八大魔王衆 3
「来たか」
ここは、スカル・キャッスルの近くにあるアスタロトの隠れ家の一つである。
ソファーに横たわるアスタロトの眼前で、一匹の蝶が人型へと姿を変える。
魔王衆の一人、サルガタナスである。
「久しぶりだね、アスタロト」
「それで頼んでいた件は、どうなった?」
「僕の調べじゃ、アッピンの本は盗まれたようだね」
「誰が盗み出したか、分かっているのか!?」
ニヤリと、サルガタナスが意地の悪い笑みを浮かべる。
「何と、バールの息子、ミシャンドラだそうだよ。面白い展開になって来たものだ」
「ミシャンドラ――確か、半人半魔の吟遊詩人のような悪魔だったな。魔界最強という大言壮語を吐く変わり者と訊く」
「あながち間違いではない。奴のギフト〈アリス・イン・ワンダーランド〉は強力なものだ。そして、東の王バールの息子でもあるしな」
「ベルゼビュートやバールゼフォンだけでも、厄介なのに――あのバールの息子とはな」
「玉座を目指すから、敵が多いのさ。僕みたいに自由奔放に生きたら良いのに」
「残念ながら、この野望だけは消すことはできぬな。紅の女帝が、魔界に君臨する様を想像するだけで心が踊る。見ていろよ、サルガタナス。きっと、私は魔界を手に入れてみせる!」




