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幕間――折れぬ魔剣 3
今、ビフロンズは魔界の宝物庫の中に居た。
〈インビジブル〉という、透明化のギフトを使っての潜入だった。むろん、このスキルも万能ではなく、気配察知に長けた悪魔なら、一発で看過できるレベルだ。いわゆる、初見殺しのスキルである。
この透明化と、ヘルファイアという二種類のギフトで、決闘する敵にしのび寄り、火炎攻撃を喰らわすことで、ビフロンズは序列を地道に上げていった。
宝物庫内には銀の鎧に身を包んだ中級悪魔が、警備の任に就いていた。
現状、四名が今日の宝物庫の当番らしかった。
まずは、リーダー格と思しき槍を持った一つ目――サイクロプスの悪魔が一人。
次に、狼の獣人――ワーウルフが一人。
三番目は、リザードマンが一人。
最後は、赤毛のオークが夜勤のメンバーのようだ。
警備兵は割り当てられた区画を巡回し、時には場所を交代しながら見回っているようだった。
最初、ビフロンズが忍び込んだ時、悲鳴を上げそうになった。
なぜなら、正面には全長十メートルほどのホオジロザメに人の足が生えたキメラの剥製が、ビフロンズをにらみつけていたからである。




