幕間――イルマと獅子と赤帽子 22
「に、しても……げっちゃ、疲れた――」
久しぶりに魔獣の能力を解放したグフは、疲労困憊だった。その場に、大の字になり寝っ転がる。斧リサは放置だ。
「大丈夫か、グフ!?」
イルマが心配して、駆け寄る。
メリーもグフの上空を、気づかわしげに旋回している。
「オメーこそ、大丈夫け? 大分、蹴られてたでねぇか」
散々、グフを罵倒していたイルマの体調を気づかうレッドキャップの心の広さに、彼女は恥ずかしくなった。
イルマは無言で、グフの頭を引き寄せると膝枕をし、赤帽子を労った。黙って、左手首を持ち上げるとグフが顔をしかめる。
「痛ちっ!!」
(骨にヒビが入っている。こんな状態で、戦っていたのか!?)
誤解からグフを傷つけたのに、魔界の悪魔からイルマを守ってくれた彼に、何か礼をしなくてはならないと彼女は感じた。
寝転がるレッドキャップの唇に、柔らかい物が押し当てられた。
イルマの唇である。
「ハ、ハラヒレホロハロー!? な、何ちゅうことをするんだぎゃ!?」
真っ赤になるグフ。
もはや、自身が何語をしゃべっているかも分からない。
「イヤだったか? こうすれば、怪我の治りが早いと誰かが言っていたのだが……」
「いや、イヤじゃねぇけど、むしろ嬉しいけんども……」
「なら、良かった」
と、満面の笑みでイルマ。
「ためたぁ〜。オラ、こんなシチュー初めてだぁ!!」
「そこは、ダメだぁ〜、にシチュエーションだろがっ!!」
斧リサのタイムリーなツッコミも、耳に入らないグフであった。




