炎帝竜のピアス 27
ギフト〈蝿の王〉が発動する。
超速再生が始まり、新たにベルゼビュートの身体が構築される。ギフトが変質し、高濃度の大気中の魔力が吸い寄せられ、金髪緑眼の悪魔は、さらなる怪物へと進化してゆく。
異変に気づいたクリムゾンが、最大火力である一万二千度の超高温ブレスを放つが、火炎の波は無効化され、吸収されてゆく。
「バカな! 我のブレスを吸収している、だと!?」
かつて、ソロモン王はあらゆる物質からエネルギーを摂取することができた。その能力で以て、次々と悪魔を各個撃破し、真の名を集め、アッピンの本を創った。
その能力の一端がベルゼビュートによって、再現される。
新たなる〈平和の王〉が誕生したのかも知れない。
ベルゼビュートは、自身に起きている変化に当惑していた。ギフト発動のトリガーは様々だが、最も多いケースは怒りである。自身や他者に対する憤怒は、きっかけとなり得る。
弱い自分に対する怒りが、ベルゼビュートをさらなる進化に導いた。怒りの炎に身を任せ、ギフトを研ぎ澄ませる。
全身にまとわりついた無数のウジが、ベルゼビュートの壊れた細胞を修復し、超速再生する。さらに、クリムゾンの超高温のブレスを無効化する炎熱耐性。身体が勝利を獲得する状態に、引き上げられる。ギフトは使えば使うほど、次回からの発動は容易になる。全ステータスが急激に上昇し、ベルゼビュートの身体は新たに〈蝿の王〉によって書き換えられた。
ベヒーモスの剛角。フェンリルの魔爪。アウルベアの剛力。レベンドーラの雷撃。グリフォンの両翼。マンティコアの毒尾。そして、クリムゾンの竜鱗――すべてが完璧な調和で融合し、完全なるキマイラが爆誕したのだった!




