猫とピアス 9
「来たか、リーズ――早速で悪いがお前の力が必要だ」
「何なりと」
「一緒に、あのバック・ベアを倒すぞ!」
ルーの視界の先に、ファブニールは巨大な眼球の妖魔を認めた。
顔をしかめたリーズ。
「前言撤回します。あの不気味な目玉と戦えという話なら、お断りです!」
きっぱりと宣言するファブニールのリーズ。
(父上、どうしましょう。使い魔が使え魔せん……)
命令を拒否する使い魔に価値などない。遠い目をした黒猫は、心の中でクー・フーリンにぼやいた。
頭痛を感じる黒猫。
かなり、フリーダムな性格でルーのファンでもあるリーズ。
「――大丈夫だ。お前は俺が描く魔法陣にブレスを放つだけで良い」
「そういうことなら――」
すでに酸弾は、やたらめったら張り巡らせたアイギスによって、ふせがれている。
多重結界魔法を行使したが、ルー・フーリンに疲れはない。
魔力は潤沢にある。
ちなみに妖精の持つ、妖力も存在する。
元々、妖魔という存在は、妖精が人間界の悪想念に染められて、モンスター化したものである。
ティル・ナ・ノーグには浄化の魔女がいて、悪想念を昇華させているらしい。
神が創った妖精界は、邪悪な魔法や呪いを弱体化させる場所でもある。
が、ルー・フーリンにかけられた、本人さえ知らぬ呪いは常に発動し続けている。
「高速魔法陣錬成!」
ルーが描き出す魔法陣に、リーズが氷結のブレスを吐く。
亜空間に収納されるブレス。
さらに発動し続けている魔法陣を、ルーは上書きしてカスタマイズする。
氷結のブレスを火炎に変換する術式だ。
「貴様、何をしている!!」
ルーは魔法陣を触って、カスタマイズしているだけだ。
だが、それは異常なことだった。
発動中の魔法陣に触れただけで、魔力は暴発する。
三メートルほどの魔法陣でも、広大な草原を焼け野原にすることが可能だ。
「この俺は発動中の魔法陣に触れて、カスタマイズすることができるのだ。師匠たちに言わせると、チートという奴らしい?」




