幕間――堕天使アスタロト 2
『なぜだ! なぜ、エンリュミオンソードが起動できない!』
アスタロトは自身の状態を分析する。
『そうか! 私は、堕天してしまったがゆえに天使としての能力を喪失したのかっ!!』
絶望がアスタロトを打ちのめす。
精霊の剣が起動できないのなら、アスタロトは生きたまま、アナコンダに消化されることになる。
『私は、何も成すこともできず、下界の捕食者のエサとなって死ぬのか!?』
堕天したアスタロトに、死への恐怖が芽生えていた。
座天使のまま、天界に居たならば、このような事態には陥らなかった。
後悔の波が押し寄せ、堕天使は大粒の涙を流した。
『これは、神に逆らった罰か……』
反逆を起こしたルシフェルに半ば、流されるように堕天した。
アスタロトは自身の運命を、人任せにした。そのツケを払っているだけだ。
高い勉強料だったが、存在を消滅させるほどの過ちか。
違う。
こんなみじめな運命は許容できない。
『こんなところで、死んでたまるかっ!!』
天使にしか発動できない能力など、意味がない。
堕天して能力が変質したのならば、まだ生き残る術はある。
アスタロトのギフト〈ラプンツェル〉が、目覚めようと鎌首をもたげる。
悪魔のユニークスキル〈ギフト〉は、神の堕天使への最後の贈り物であった。堕天しても、自身の道を切り開けるよう特殊な力を授けたが、それが天使との抗争に利用されるとは、考えていなかった。
堕天使や悪魔のための王国を、神は地上に用意したかったが結局、大天使ミカエル率いる軍に封印される形となってしまった。




