幕間――ルー・フーリン強化週間 21
サイドテールは確か、ラニーサと言った。
魔術師は、高等テクニックである無詠唱を使えない場合が多い。が、あらかじめ魔法を起動させておくことによって、それを補っている。というのも、カスタマイズした魔法陣をトラップとして配置すれば、詠唱せずとも勝利することができる。
まぁ、相手が俺でなければの話だが。
闘技場の床に仕込んだ魔法陣を、俺は何気なく踏む。
ふむ、時限式のトラップか。
俺は、思いっきり魔法陣を踏んづけた。
ニヤリと笑うラニーサ。
しかし、トラップは発動しない。
当然だ。
俺は、魔法陣に直接干渉して、カスタマイズすることができる。
これは御前試合なので、相手を殺害する魔法はご法度だ。
死の危険にさらされた時は、闘技場中央の威力半減の魔法が発動するようになっている。
本来ならば、だが。
そのストッパーが何者かによって、外されている。
もちろん、俺を狙った犯行だ。
やれやれ。
幼い頃から俺は、常に死の危険にさらされてきた。
今回は、王の正式な後継者である王太子の称号を得られるかどうかの瀬戸際なので、相手方も必死なのだろう。
ご苦労なことだ。
この間違った労力を、争いを止める方向に割いてくれるのなら、俺は王太子なぞ辞退して構わない。
王様なぞ、やりたい奴にやらせておけば良い。
父上は別だ。
父上は、ティル・ナ・ノーグの平和を憂いて、あえて妖精王の地位に居るのだから。
俺も父上も、玉座にはこだわっていない。
相応しい者が居れば、いつでも譲り渡す気でいる。
まぁ、妖精界を私物化せず、内乱を起こさないなら、その資格はあるだろう。
後は、ドラゴンやグリフォンらの魔獣同盟らが納得すれば完璧だ。
彼らを御せなければ、妖精王の称号はやれん。




