幕間――ルー・フーリン強化週間 18
まずは、一戦目。
出てきたのは、パーソロン族の若者で槍使いの男である。
円形の闘技場は、オーベロン城の中庭にあり、石造りの観客席は段々になっている。
エルフの部族長らは、父上の周辺に座り、歓談している。
ケット・シーの俺には、目もくれない。
最初から負けると、思っているのだろう。
俺は、父上を見た。
すると、父上は軽く握り拳を作った。
珍しい。
今日は、少し本気を出して良いみたいだ。
王になど、なりたくはないが、かと言って他の部族長らに統治を任せるにも不安がある。
実権を握った部族が、再び内乱を起こすのだけは避けたい。
サクッと行こうぜ!
とは、行かないか。
妖精界は、父上が治めているからこそ平定できているのだ。
が、父上はよりによって、この俺を次代の妖精王に指名した。
下級妖精に従うことを良しとしない、フォモール族あたりの猛反発は凄かった。
ティル・ナ・ノーグの統治が、猫如きに務まるものかという言い分だ。
父上から帝王学を学んでいるし、魔法は最上級クラスを属性ごとに修得してるし、剣の腕前は師匠ら以外なら何千人来ようと、敵ではない。
ぶっちゃけ、俺は適任だが、やりたくない。
黒猫王子で十分だ。
王太子になれば、正式な妖精王の後継者となってしまうから目立ちたくはない。
だが、父上の前では良い所を見せたくもある。
ずっと、父上が妖精王でいられるシステムを作らないとだな。
とりあえず、御前試合はサクッと勝って、父上にモフッてもらおうか。




