幕間――ルー・フーリン強化週間 8
眼前に突如、現れた俺に目を見張るギルデガーラとガルフォン。
構わず俺は、竜王をにらみつける。
「俺は、妖精王の正式な使者として、ここにいる。それが下級妖精だろうが、ハイエルフだろうが関係ないはずだ。使者に対しての暴言は許そう。が、我が王の――父上に対しての、すべての罵詈雑言は許さない。竜王ギルデガーラに謝罪を要求する。謝罪なくば、竜族をこのティル・ナ・ノーグから消滅させる!」
これは、脅しではない。
本気だ。
竜族の蛮行がティル・ナ・ノーグで行われるのであれば、トカゲ共を駆除するのに、何のためらいもない。
前々から、トラブルを起こすドラゴンには手を焼いていた。竜の生息域は一種の治外法権なので、手が出せない状態だ。
灸をすえるなら、今が絶好のチャンスだろう。
竜王を、この俺が倒してしまえば、自然と竜族は妖精王に従えざるを得ないはずだ。
最初から実力行使しておけば、良かった。
まぁ、父上の顔を立てようとした結果がこれだ。
俺が、ハイエルフでないのがうらめしい。
なぜ、俺はケット・シーの姿をしているのか。
関係ない。
俺は、俺だ。
父上が俺を信頼して、この案件を任せてくれた。
期待に応えなければ。
一方、ギルデガーラの方は俺の啖呵に面食らっているようだ。
当然だ。
何せ、下級妖精のケット・シーが竜族にケンカを売ったのだからな。
俺は商人ではないから、売り買いは得意じゃない。
ただ、父上への悪口は、この俺にケンカを売っているのと変わりない。
ケンカ上等――父上のためなら、ドラゴンだろうがグリフォンだろうが相手になってやる!




