幕間――イルマと獅子と赤帽子 19
上空にジャンプし、上段から斧リサを振るうグフ。
サブナックは大剣を横向きにし、レッドキャップの一撃を防ぐ。
(ぐっ! 一撃一撃の重さが半端ではない。この小柄な身体のどこに、こんな力がっ!?)
ここで、グフに異変が起きた。
何と、斧リサが手から滑り落ちたのだ。
苦痛に顔を歪めるグフ。
先ほど、メリーを庇って左手首にかなりのダメージが蓄積されており、ついに限界を迎えたのだ。
「グフ!?」
斧リサがグフを気づかう。
今までにも苦戦することはあったが、武器を取り落としたのは今回が初めてだ。
機を逃さず、フルンティングで袈裟斬りを仕掛ける剣獅子。
バァサ!
回避しようとしたグフの背中に、蒼いグリフォンの両翼が出現し、距離を取った。
(なっ! グリフォンの翼だとっ!?)
やはり、何らかのスキルでグフは魔獣の能力を使えるようだ。
サブナックは警戒を改め、次のグフの一手を待った。
一方、グフは自身に翼が生えたことに気づいていなかった。
イルマのミョルニルによる打撲で深刻なダメージを負ったグフは、痛さのあまり斧リサを手放した。後で、説教が待ち受けていることは間違いない。
(もう、左は使いもんになんねぇ。無事な右で、ライオン頭に勝つには……)
止めた。
四の五の考えるのはナシだ。
本能の赴くままに戦う。
それが、グフの戦闘スタイル。
飛びかかるグフ。
グリフォンの翼が、レッドキャップを空中に留まらせる。
「喰らえっ! オラのダイナマイトでこピン!」
(え〜っ、でこピンかいっ!)
斧リサのツッコミを無視するグフ。
レッドキャップは、この上なく真剣だった。
今のグフは、ふざける余裕がないほど、でこピンに全力を傾注していた。
「ふざけた技を……」
横向きにしたフルンティングの刃で、グフのでこピンを受け止めたサブナック。
グフの一指が大剣に触れた、その瞬間――
サブナックの五体に衝撃が駆け抜けた!
重い!
たかだか、一本の指に込められた力が途轍もなく重い。
とっさに、片手で振るっていた大剣を両手に持ち替え、レッドキャップの攻撃をいなす剣獅子。
空中にホバリングしながら、一指にすべてを込めるグフ。
成り行きを見守るイルマ。
まるで、ティル・ナ・ノーグの時が止まってしまったかのようだった。




