幕間――ルー・フーリンの誕生 10
「これ、スカサハっ! 師匠をつかまえてババア呼びはないだろう!」
怒るロビアタールに、麗子は調子に乗り過ぎた自身を反省する。
「ごめん。ごめん。つい、口が滑って……」
「ほう、次は余計なことをさえずる口を縫い止める魔法を教えてあげようかね?」
優しげな声でロビアタール。
(まずい。かなり、怒ってやがる)
「し、師匠! あたいが悪かった。許してください!」
「はぁ。性のない娘だね。遠話で、最強の助っ人を呼んでやるから、大人しく待ってな」
呆れたロビアタールは、未熟な弟子のために最強の助っ人を要請することに決めた。
何だかんだ言っても、深淵の魔女は麗子をかわいがっていた。エディンと同様に、娘同然に思っている。実は、さしてロビアタールは怒っていない。こうして、弟子とのやり取りを楽しんでいるのだ。
「最強の助っ人!?」
(そんな奴、いたっけ?)
人間界で、レディースの特攻隊長を張ってた時は、仲の良い暴走グループの一人に、そういう存在がいたが生憎、ティル・ナ・ノーグでは心当たりがない。
ロビアタールの遠話が途切れてから一時間後、エディンと麗子とクー・フーリンのいる天幕に、来訪者があった。
ドワーフにして、鍛冶の神。
イルマの養い親にして、黒猫の錬金と鍛冶の師匠であるゴブニュだ。
「待たせたのう。これより、妖精王の息子の救出作戦を行う。皆、準備は良いか?」
ゴブニュの言葉に、三人は力強くうなずいた。




