炎帝竜のピアス 22
雷獣レベンドーラの蒼雷をまとったアウルベアの剛腕を振るうベルゼビュート。
さらに、魔狼フェンリルの爪撃がクリムゾンの胴体に炸裂する!
「がはっ!」
ベルゼビュートを侮っていた炎帝竜の反応が一瞬遅れ、フェンリルの魔爪の一撃を喰らい、吹き飛ばされるクリムゾン。
(さっきまでとは、スピードが段違いだ。まさか、魔獣の能力を使いこなし始めてるのかっ!)
驚愕するクリムゾンを、さらに猛追するベルゼビュート。
マンティコアの毒尾が急激に伸び、炎帝竜の右眼を刺し貫こうとするが回避。
「チッ! やはり、空中戦じゃ分が悪いか。なら!」
舌打ちするキメラの悪魔。
ならばと、魔力を暴走させ邪眼状態にし、一時的に身体能力を急激に高めるベルゼビュート。
瞳が紅く染まり、金髪緑眼の悪魔の全身が強化される。
身体中がきしみ、心臓に多大な負荷が掛かる。
ビュートの唇から血の筋が垂れ、乱暴にそれを拭う。
(保ってくれよ。奴をぶちのめす間だけで良い)
再度、突撃を敢行するベルゼビュート。
今度は油断なく、身構えるクリムゾン。
モード・キマイラを発動させたままの悪魔と、超高温のブレスを吐かんと待ち構えるファイヤードレイク。
それをルシドラシルの樹上から観戦するアスタロトとブロケル。
「どうやら、うちの息子は目覚めるのが遅いようだな」
能力開花の遅延を皮肉るアスタロト。
「どういうことですかぁ?」
意味が理解できないブロケルは、率直に主人に尋ねる。
「ベルゼビュートが、寝坊助というだけの話だ」
「はぁ?」
主の話の大半を理解できないブロケルは、気の抜けた声を発した。




