父上への報告 9
「愛の結晶……だと!? 誤解を招くような言動は止めてもらおうか。リア・ファル――」
父親であるクー・フーリンは、ともかく――この自称リア・ファルには、トラブルメーカー特有の匂いがする。
ぷんぷんする。
多分、自身の言動に責任を負わないタイプだろう。
「誤解もミミズも無いわよ。愛の結晶の何が悪いの? それにアンタの剣をパワーアップしてあげたんだから、感謝ぐらいしなさいよね!」
腰に手を当てながら、リア・ファル。
(釣りにでも行くつもりか? 生意気な女だ。王を選定する宝玉が、まさか絶滅したはずのカーバンクルとはな!? 宙に浮いてるということは、幽体の可能性もあるということか?)
黒猫は、リア・ファルの正体について、思いを巡らす。
「フラガラッハの強化なぞ、頼んではいない。それより、本物のリア・ファルなのだろうな?」
疑いのまなざしを送る、ルー・フーリン。ひょっとしたら、クー・フーリンが騙されている可能性もある。
「失礼な黒猫ね! かわいくないったら、ありゃしない。こんなのが、次の王様だなんて、信じれない!」
「すべての黒猫が、かわいいと思うのは間違った見解だ。それに、まだ父上が存命なのに、後継の問題を口にするな!」




