猫とピアス 6
(一筋縄では行かぬか。なら!)
ルー・フーリンは宙に高速で魔法陣を描き出す。
「サラマンダー召喚!」
黒猫の左の肉球から火炎が迸り、トカゲの姿をしたサラマンダーが召喚される。
精霊の能力を増幅させる古代のルーン文字に、火トカゲが炎を吹きつける。
役目を終えた精霊は、即座に異界へと帰還する。
「炎剣クラウ・ソラス――チープ版の完成だ!」
見ると、ルー・フーリンのフラガラッハに火炎が巻きついて、火の属性剣へと変化していた。
これは神々の王にしてルーの剣術と体術の師であるヌアザの持つ炎剣を、人間界に現出させる魔法であった。もちろん、本物ではないので、安っぽいバージョンであった。
「たかが精霊の炎をまとったくらいで、我が斬れるものか!」
「その根拠のない自信を打ち砕いてやろう」
ルー・フーリンが一挙動でバック・ベアに肉薄する。数十メートルの距離を一瞬で移動する縮地という方法である。
「ハァッ!」
高速の連撃が猫剣士から繰り出されるも、すべての剣撃が弾かれてしまった!
魔力を上乗せした斬撃を放ったにも関わらず、件の妖魔は無傷であった。
「バカな! すべての斬撃を弾く、だと!?」
驚愕する黒猫。
「我も、あの方の一部であるからな」
勝ち誇ったバック・ベアが、我知らず情報を漏らす。
「ほう――それでは、貴様の裏にはバックが居るということだな?」
「猫如きが預かり知らぬこと。貴様はここで、我のエサとなれ!」
「御免こうむる。貴様なぞ、すぐに倒してやる。そして、ご褒美に父上からモフモフしてもらうのだ!」




