幕間――ドラゴンと魔女
藤原京子と夜神麗子が姿を消して、人間界では一週間が経過していた。
行方不明者やバラバラ殺人事件が多数、件の工事現場付近で目撃され、現場は封鎖されることになった。
深夜――その工事現場、上空にラベンダー色のドラゴンに騎乗する魔女の姿があった。
スカサハは空間全域に、忘却魔法アムネジアを展開する。さらに痕跡を消す魔法を使い、完全に二人の存在を掻き消した。
「これで、京子と麗子が居た痕跡は残らない」
スカサハは過去の人間界の時空に翔んだ。
時間軸を正常に戻すためである。
過去と現実に行き来できる、時空の裂け目を閉じる。そうしなければ、地球が滅んでしまう。
なぜなら、ブラックホールと化した時間の渦が永久に世界を飲み込まんとするからである。
最後にスカサハ――いや、麗子は名残惜しそうに人間界を見下ろした。
「どうされました、スカサハ様?」
ドラゴンが訊いた。
「何でもないわ、メリュジーヌ。私たちは、ここにいてはいけない存在。早く、帰りましょう」
スカサハが前方に杖をかざし、魔法陣のゲートを出現させ、彼女とメリュジーヌはティル・ナ・ノーグへと帰還するのだった。




