幕間――神の犯した罪
神は罪を犯した――
地球という惑星をより良くしようとして、補佐役の天使らを無数に創造した。
幾千幾万もの天使が次々と創造され、天界の黄金宮殿は一時期、飽和状態であった。
さらに神は人間を創造した。
この種には善と悪の両方の感情をバランス良く配備した神自慢の作品だった。
が、地上人らは自国の領土を拡大せんと、戦争を繰り返した。
それを憂いた主神アドナイは、グリゴリと呼ぶ天使の一団を地上へと派遣した。
それは大きな間違いだった。
良くも悪くも純粋な天使は、人間の憎悪や妬みや殺意などの悪想念に触れることによって、守護対象である人間を殺したり、子を設けたりと悪逆の限りを尽くした。
天使と人間の間に生まれた種は、ネフィリムと呼ばれ、人間界に多大な損害を与えた。
天使は神への信仰を忘れ堕天し、一部は悪魔となり地球の地下に、暗黒界と呼ぶ王国を造った。
人間に従うことを良しとしない熾天使の長ルシフェルは、天界の3分の2の天使を率い、反乱を起こした。
いつしかルシフェルは敵対者という意味のサタンと呼ばれるようになった。
神はサタンだけを滅ぼすために、太陽の光から大天使ミカエルを創造した。
聖槍ロンギヌスを携えたミカエル軍は、堕天使の軍勢から天界を取り返し、地上へと追いつめた。
堕天使や悪魔の軍勢は、神と軍神メタトロンら熾天使たちに封印され、地下深くの暗黒の地で暮らすこととなった。
地下へと逃れたルシフェルは、神への庇護を受けるエルの文字を取り、堕天使ルシファーとして暗黒界を包み込みように魔界に帝国を建造した。
封印を強固にせんと、神は次代の後継者にメタトロンを指名した。
その頃、妖精界であるティル・ナ・ノーグも創られた。ここは堕天使を天使に戻すために創られた世界だったが、天使らの遺体や神の血などによって精霊や妖魔や魔獣らが生まれる原因となった。
神は天使らの遺体や自身の血などを媒介にティル・ナ・ノーグを創ったが、予想だにしない方向へと妖精界は進化した。
数百年の時を経て、メタトロンを次代の神にする儀式が行なわれた。
今のアドナイの能力では、世界を管理するには弱体化していたので、メタトロンにその任を任せたかったのだ。
次代の神になる儀式は簡単だ。
ただ、地球の歴史を受け入れるだけだ。
だが、それは恐ろしく苦難に満ちた儀式だった。
そして、メタトロンは失敗し、リンドブルムへと変貌した。
神が犯した罪は、グリゴリを地上に送り込んだこと。
そして、次代の神になれたであろうメタトロンをドラゴンにしてしまったことだ。
神は自身の犯した罪に恐れ慄き、姿を消した――




