幕間――イルマと獅子と赤帽子 7
(魔界の悪魔なのか? なぜ、ルー・フーリンの居場所を探す?)
不審に思いながら、イルマはサブナックと会話する。
「人に物を尋ねるのなら、騎馬から降りるのが礼儀であろう」
サブナックは礼節を重んじる。
状況によっては、礼儀を無視することもある。
イルマの言い分に納得したサブナックは、愛馬から降り立った。
「これは、失礼した。で、どこに行けば剣士ルー・フーリンに逢える?」
「知らぬな」
グフは成り行きを見守っている。
イルマに攻撃を仕掛けることもできるが、フェミニストなレッドキャップは卑怯な真似をするつもりはない。
それに、サブナックの素性が知れぬ内は、うかつに攻撃しない方が良いだろう。
「貴様っ!」
サブナックは女性を斬る趣味はない。が、敵対するのなら、話は別だ。
「ルー・フーリンは我が兄弟子。お主のように殺気を発散している輩など、このイルマの目が黒い内は近づけさせぬ!」
ミスリルのウォーハンマーを左右に回転させ、臨戦態勢を取るイルマ。
そのイルマを、心配そうに見守るグフ。
(あの姉ちゃんじゃ、ゼッテー、ライオン頭に勝てねぇ!)
「威勢が良いな、小娘。だが、そこもとでは某には勝てぬ。引くが良い。追撃はしない」
イルマの戦闘経験の少なさを、即座に見抜いたサブナック。
ウォーハンマーの振り方に、若干のズレがある。剣の達人である稲妻侯には、イルマの技量の稚拙さを感じることができるのだった。
「魔界の悪魔如きに引いたとあっては、兄弟子に笑われる。我が名は、イルマ。ウォーハンマーのイルマ。かかって来い、獅子頭の悪魔っ!」
再度、ウォーハンマーを振り回すイルマ。
「良かろう。女性は斬らぬ主義だが、敵に回るのであれば容赦はせぬ! 我が名は、サブナック。〈稲妻侯〉サブナック。イルマと言ったな。邪魔立てするなら、女とて斬る!」




