父上への報告 6
一瞬、ルー・フーリンは言葉の意味が理解できなかった。
いや、時間が止まったかのような衝撃だった。
実際、クー・フーリンはピンピンしてるし、病気の兆候は見当たらない。
黒猫は、父親が冗談を言ったのだと、判断した。ルーにとっては、笑えないジョークのトップに位置する。
父親の死など、悪質な冗談以外の何物でもない。
「またまた、ご冗談を。ルーをからかわないで下さい」
黒猫の声が、かすかに震える。
父親は冗談を言うタイプではない。
目に見えぬ難病だと言うのなら、黒猫はそれを解決するために奔走するだろう。
「残念ながら、冗談では無いのだよ。私の死は、魔女の予言によって運命づけられている」
「そんなデタラメな予言を吐く魔女は、ルーが懲らしめてやります!」
「お前も知っての通り、魔女の予言の的中率は百パーセントだ……回避できる術はない」
「いやです! 父上っ、ルーを一人にしないで下さい!」
我知らず、黒猫は涙を流していた。
クー・フーリンの居ない世界に、価値などない。
なぜなら、黒猫の生き甲斐は妖精王の勇姿を見ることだから。
「お前は、一人じゃない。妖精騎士団の仲間も居るだろう」
「そんなこと――父上が居なければ、何の意味もありません。ルーは父上を手助けするために、妖精騎士団を作ったのですから!」
子供のように泣きじゃくる黒猫を、宙に浮いた少女が見ていた。
「ふぅん、今度の王様は泣き虫ね」
黒猫は、とっさにフラガラッハを抜き、上空に浮いた少女を警戒した。
少女は、紫の長い髪とアメジストの瞳を持つ美少女だった。ゴシックロリータの衣装なのは、彼女の趣味なのだろうか。武器を携帯しているようには、見えないが妖精宮まで潜り込んで来る以上、敵である可能性が高い。
「何者だ。貴様っ!」
黒猫がフラガラッハを構え、誰何した。
「私の名は、リアよ」
紫の美少女は、悠然と黒猫の前に降り立った。
「名前など聴いていない。何の目的で、この戦士の間へ入り込んだ!」
「元々、私はこの部屋に居たわよ」
「嘘をつけ! 貴様など、見たことが無いぞ!」
「あー、もう妖精界の四大至宝の一つなんだってば!」
黒猫のエメラルドグリーンの瞳が、リアのアメジストの瞳を見つめ、叫んだ。
「き、貴様が王を選び、王を導く妖精界の至宝、リア・ファルだとっ!!」
すいません。体調不良で寝込んでました。
今は、大分良いので更新を。




