妖精姫のケーリュケイオン
諸事情ありまして、スマホから投稿しております。
そのスマホも調子が悪く、ログインするごとに登録しなおしみたいになるので、書くのを止めておりました。
つたないながらも書き綴っていきたいと思いますので、よろしくどうぞ。
プロローグ
数多の妖精や幻獣が住まう世界、ティル・ナ・ノーグ――
そこは人間界と魔界の狭間にある世界である。内乱の絶えぬ妖精部族を一つに束ねた妖精界の英雄クー・フーリンが統治して四百年を数える。
ドラゴンやグリフォンなどの魔獣らとも共存し、妖精王の治世は順風満帆かと思えた。
が、封印されし邪竜リンドブルムの復活を期に、ティル・ナ・ノーグは混沌の渦に巻き込まれて行くのであった。
ティル・ナ・ノーグ西方――
妖魔の森にほど近い場所に、不可思議な一団が集っていた。
下級妖精であるケット・シーと呼ぶ、猫の獣人が一匹。
天界から降りてきたと思しき、赤毛の裁天使が一人。
魔界から現出したらしき弓と剣を得物とする悪魔が二体。
そして、今一人は人間界の女子高生が一人。
復活した赤き竜・リンドブルムを取り囲むように宙に浮いている。
いかなる魔法によるものか、彼らは緑色の球体の中にいる。
「これはっ!」
黒猫が驚愕の言葉を発した。
「リンドブルム相手に、どこまで保つか分からぬが結界を張った。そこで、一つ提案だ。いかなる邂逅か知らぬが、ここに集った天使や悪魔の諸君――リンドブルムを倒す間だけ、共闘することを頼みたい」
凛とした声が女子高生から発せられた。
「バカな、悪魔と共闘だと!?」
赤毛の裁天使が叫んだ。天界では〈炎の鞭〉と異名を持つカイイリエルは、周りの獅子頭と狩人の姿をした悪魔を見咎める。おそらくは72柱の魔神に籍を置く高位の悪魔であろう。
「敵である天使と組めと!」
獅子の悪魔獣人が吼える。
彼の名は、サブナック――世界の終末に現れるという黙示録の四騎士候補の一人である。
「フン! どのみちリンドブルムを倒さぬことには我らとて命はないのだぞ」
と、鼻で笑う女子高生こと京子。
「……良かろう。その女の言う通りだ。あくまでリンドブルムを倒す間だけの紳士協定に乗ってやる。それに面白そうではないか」
魔界のロビンフッド――バルバトスがニヤリと笑う。彼は背に蛇を模した剛弓・アンフィスバエナと矢筒を負った美髭の悪魔であり、遠隔攻撃の名手であった。
「天使と悪魔と妖精と人間の共闘か――二度とない組み合わせだろうな」
そう、黒猫の姿をした獣人の剣士がつぶやく。左耳には三つの黄金色に輝くリングのピアス。首元には赤いペイズリー柄のスカーフ。そして、ポンチョのように見える魔道師の濃紺の短めのマント――それには、エルフの王族の紋章が背中と、愛剣フラガラッハの鞘に刻印されている。
紋章の意匠は蔦に狼であり、妖精王であるクー・フーリンの二つ名、黒狼の槍士から着想を得たに違いなかった。
「その前に一つ、ルーにはやってもらわねばならぬことがある――」
「俺に何をさせる気だ、京子?」
京子はルー・フーリンの右耳に如意棒よろしく、小さく姿を変えている紅き魔槍を指さす。
「そのゲイ・ボルグで、私を殺すだけの簡単なお仕事だ」
京子は満面の笑みで、超物騒なことをのたまった。
『王族な猫』再始動いたします。
どんなに時間がかかっても、書いていきたいと思います。
皆様、よろしくおねがいします。