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猫のマッサージ屋さん

作者: 倉田四朗

 とある小さな町の小さな建物には、これまた小さな猫がはたらくマッサージ屋さんがあります。

 小さな猫は毎朝お店の看板を出すと、軒先においた藤椅子の上で丸まって、日向ぼっこをしながら一日じゅうお客さんが来るのを待っているのです。

 お客さんが来ると、小さな猫はあくびをしなから大きくノビをし、「いらっしゃいませ」とおじぎをしてお店のなかに招き入れます。

 引き戸を開けると小さな土間がありまして、お客さんは靴を脱がなきゃあがれません。上がった先は畳の床で、施術台はたったひとつ、その上に置かれています。小さな猫はお客さんに衣紋掛と座椅子を勧め、いそいそと飲み物の準備をしてくれます。お店には緑茶の匂いが漂っていて、淹れてくれるのは、やっぱりあたたかい緑茶です。お客さんは香りとあたたかさにすっかりリラックスして、対面に座った小さな猫の「本日はどうされましたか」という質問に、すんなりと答えてしまいます。

 カウンセリングが済んだら、小さな猫はお客さんに、施術台にうつ伏せになるようにお願いします。小さな猫はさっきの話をもとにして、お客さんの疲れているところにぴょいと飛び乗ります。小さな猫は体重が軽いですから、お客さんはぜんぜん苦しくありません。そして小さな猫は、その小さな二本の前足に渾身の力を込めて、ぐっとお客さんの背中を揉みます。小さな猫はあまり力がありませんから、ここはがんばりどころです。肉球がついた前足を交互に押し、筋肉をほぐすために力をこめます。もみもみ、もみもみ、もみもみ、もみもみ……………爪が出ないように気をつけながら…………

 ……………やがてお客さんがまどろみからハッと覚めるころ、マッサージは終わっていて、小さな猫はすみっこで毛づくろいをしながら待っています。お客さんが気恥かしさに小さく頭を下げながら施術台からおり、上着を着おわるころには、小さな猫はひどく控えめに、今日の代金をつげます。お客さんはなんだか悪いことをしている気になって、少し多めに払おうとしますが、小さな猫がひどく恐縮して頭をふるので、これ以上食い下がるのも悪いと、お客さんはすんなりあきらめます。

 お客さんが靴を履くあいだに、小さな猫は引き戸を開けます。それからにこにこと声をかけてくれるお客さんに丁寧なおじぎをかえし、その人が通りの向こうに歩いていくのを、小さな猫はずっと見送っています。ぽかぽかとした日差しの下で…………

 やがてお客さんの姿が見えなくなると、小さな猫は軒先の藤椅子にぴょいと飛び乗り、また丸くなります。お日様の匂いに包まれた小さな猫は、さっきのお客さんのことを考えながら、ゆっくりと、ゆっくりと眠りに落ちていきます。

 お客さんが帰りぎわに言った「また来ます」という言葉が、小さな猫はとてもうれしいのでした。


おわり

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― 新着の感想 ―
[良い点] マッサージ屋さんを営んでいる猫が、お客様を喜ばせるために マッサージをがんばるところが良かったです。 ラストのお客様の「また来ます」というセリフで 嬉しそうにするところも良かったです。 […
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