【二章】13
彼女は僕に色々教えてくれた。
彼女の存在について。僕の存在について。外の世界について。
それから。彼女自身の好きな人について。
▼ 姉妹 ▲
「ふわぁ……あふぅ。イナリー、昨日のカレーとご飯、冷蔵庫に入れとくねー」
「んー? おー(シャコシャコシャコ)ガラガラガラ……ペッ」
翌日、早朝。ご飯の準備をしようかと起きた僕だったが、引き続きカレーというのも何かアレなんで、イナリと共に外に食べに行く事に。
「準備出来たー? 行くよー」「んー、ウワッ外さむ!」
夏前とはいえ早朝はキンキンに冷えている。この澄んだ空気、嫌いではないけど。
「ほら、そんな事もあろうかとマフラー持って来たよ。二人で巻こう」
「お、そりゃいいな。ほら、もっとくっつけよ」
「やんっ、強引っ。ふふ、こんなに近いとカップルに見えるかな?」
「そうだなー」
冷めた反応しやがって。
もっと『な、なに言ってんだ!?』的な反応欲しい気持ち悪いけど。
そのまま徒歩で駅に到着。
休日、日曜の早朝といえどスーツを着たサラリーマンは存続する。日本を支える歯車達に心の中で感謝の意を送りつつ電車に乗り込み――三〇分程で目的の【愛子駅】に着く。
「今更だが……あの店、本当にモーニングやってんのか?」
「僕も自信無くなってきたけど、してなけりゃさせればいいんじゃない?」
「お前最悪だな」
人と話をしながらだとあっという間に時間は経つもので、僕らが朝食を頂きに来た喫茶店【フォックステイル】へと到着。
「お、まだ早い時間だってのに人並んでんな、ちゃんとモーニングやってるようだぜ?」
「並ぶのめんどいから裏口から入るよー」
「お前最悪だな」
そんな罵声を浴びせつつもしっかりとついてくるイナリと共に、慣れた動きで裏口にまわり、
「(ガチャ)うぃーっす。朝飯食いに来たよー」
「あん? 誰だ勝手に……ってツル坊かよ! 今忙しいっての見りゃ分かんだろ!」
裏口を開け、厨房で出迎えてくれたのはスキンヘッドの厳ついオッサンだ。フライパンでベーコンエッグを焼いたりスープを掻き混ぜたりして本当に忙しそう。
「よぅ、大変そうだな。あたしらも手伝うか?」
「お、『お嬢!?』 い、いや、そういうワケには……」
「あー! ツルちゃんにイナリちゃんだー!」
エプロン姿でパタパタと駆け寄って来る幼馴染に、
「カサネちゃんオハヨー!」
と僕はすかさず抱き着く。
「オハヨーツルちゃーん! 今日も可愛いしいい匂いだね!」
「カサネちゃんもいい抱き心地だねーモミモミッ」
「てめぇツル坊ぶっ飛ばすぞ! 邪魔しに来たなら帰れ!」
「うるせぇハゲ! 黙って娘の身体触らせろ!」
「ツルちゃんとイナリちゃんはヘルプに来てくれたのー?」
言いつつ、カサネは出来上がったばかりの熱々トーストとチーズオムレツを手に持つ。
「違うよカサネ、飯食いに来たんだ。それ貰っていい?」
「だーめっ、これお客さんの! あと一時間でモーニングタイムも終わるから、その後なら同じの作ったげるよ!」
「しゃあねぇなぁー」
面倒臭いが朝飯の為にと、僕とイナリはそれから客足が途絶えるまで喫茶店を手伝う。




