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6

さ、お代わりでも持って来ようかと立ち上がった僕は、


「オラァ!! お前らその場から動くんじゃねぇ!!」


唐突に始まった――拳銃とアーミーナイフ持った男の登場という――楽し気なイベントに、すかさず生徒会長と一緒に、トラブルほいほいイナリを見るのであった。


「……なんだよ、あたしは関係ねぇぞ」

「「ふぅーん」」

「んだよ揃いも揃って!」

「おいそこのガキ共うるせぇぞ! この手にあるもんがわかんねぇのか!?」

「やかましい! テメェのせいでこっちは迷惑してんだ! ぶっ飛ばす!!」


イナリはテーブル上のケーキナイフを握り締め、強盗男に八つ当たり気味に突撃。獣のような俊敏さで近づいて来るイナリに、強盗男は当然戸惑い――一瞬でゴツいアーミーナイフと拳銃を弾かれ「ゴフッ!?」 イナリの蹴りで、問答無用に豪快に吹っ飛ばされた。

『ドンガラガッシャン』と派手に崩れるテーブルや椅子に客も小さく悲鳴を漏らす。うーむ、流石修羅場慣れと褒めたいところだが、いい加減加減というものを知って欲しい。


「ったく、雑魚が粋がりやがって……やっぱり、拳銃は偽物か。ん、直前まで何処かに電話掛けてたようだな。仲間か? まだ近くに居るならついでにこいつも……」


イナリの手にあるのは、一つの携帯電話。男に近付くと同時に、ちゃっかりくすねていたらしい。手癖の悪い探偵だ。


『ピリリリリ……』


店内に響く着信音。音源は、僕のすぐ近く。その音源を中心に、ザッと、人が離れて行く。中心に居たのは……一人の『店の制服を着た』男。

誰かがポツリ、呟いた。「て、店長?」と。


「い、いや、俺は違っ……!」

「間抜けは見つかったようだな。まさか店の責任者と強盗がグルだったとは。その側の鞄に入ってるのは店の金か何かか? 随分と用意が良いじゃねぇか」

「き、決め付けないで下さいお客様。たまたま、同じタイミングで電話が鳴っただけで」

「じゃあ出てみろよ。てか、仕事中ならマナーモードにしてろよ間抜け」

「くっ……! くそ!」


焦った店長は、あろう事か近くに居た客を引き寄せ、丁度手に持っていた【牛刀】を客の顔面近くに置き、


「人が念密に練った計画をぶち壊しやがって! テメェみたいなガキが来なけりゃ! このまま捕まるくらいなら客を道連れにしてやる! テメェのせいでこいつは死ぬ!」

「……もうお前、終わりだよ。二重の意味で」

「ああ!?」

「……なんで、よりにもよって、そいつを人質にしたんだ。『刻まれるぞ』」


店長が人質に選んだのは――僕でした。


「キャー、タスケテイナリー」

「棒読みやめろ、少しは緊張感持て」

「えーだってさぁ、僕相手に【こんな鉄の板】だよ? 舐められすぎてやる気でないわ」


僕は指を一本立て「お、おい何をして」スッと、牛刀の刃を撫でた。――カラン。「は?」と、地面に落ちた【包丁の刃の半分】を見つめる店長。

『ガンッ!!』 同時に、鈍い音が背後に響いてて……ドザリ、店長が地面に倒れた。


「あまり無茶しないでよ、鋏」

「いや、今の君には言われたくないけど、助けてくれてありがとう」


手に持った店の椅子で、店長をぶん殴ってくれたようだ。躊躇がなくて怖いなぁ。


「オラァ! ガキ共が舐め腐りやがって!」


と。終わったと思っていたゴタゴタはまだ続くらしい。イナリに飛ばされていた強盗男がいつの間にか復活していて……


「ま、ママぁー!!」


 僕が先程、駅で助けた幼女を人質に、アーミーナイフを突き付けていた。

瞬間、僕の中に『既視感』が過る。


『助けたいのであれば、容赦はするな』


と僕の中に居る【神様】が唆す。

そうだ。僕が幼女に余計な事をしていなければ……助けていなければ、こんな運命に巻き込まれる事は無かったかもしれない。僕の責任。

だから、責任をとる。


僕は目を凝らして――強盗男の【縁糸】を瞳に映し、掴み、『思いっきり引っ張る』。


「おあっ!?」


僕目掛けて無抵抗に飛び込んで来る男。

腰を低くし、捻る。

その構えは、最速の剣術、居合い。


神様は教えてくれた。技名は―― 『ドグシッ』 ……ん?


一閃が決まる、その刹那。

僕の目の前にイナリが現れ、飛び込んで来た強盗男の顔面に、足の裏をぶち込み、蹴り飛ばした。

再び派手な音を響かせながらテーブルや椅子を撒き散らす強盗男。どうやら、ある意味イナリに『助けられた』ようだ。


「ふぅ……間一髪。おい鋏、場所考えろよ、血の雨でも降らすつもりか」

「何をおっしゃる、僕の一級の切れ味は血の一滴も散らせないって有名でしょ」

「ものの喩えだよバカ、ショッキングなシーンになるのは間違いねぇだろバカ」

「お二人さん、イチャイチャしてるとこ悪いけど、そろそろ立ち去った方がいいんじゃない。じきに警察も来るでしょうし」


生徒会長の言う通り、ざわざわと人が集まり出したようなので、面倒くさくなる前に消える事に。


「かみさまー、またありがとー」


ううむ。あそこで大きく手を振る幼女には、また今度、会う事になる縁を感じる。


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