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――生徒会長曰く。二人がハンバーガー屋で腰を落ち着かせようとしていたその時、事件は起きた
突然『ガダンッ』と豪快な音と共に倒れる目の前の席の客。
店内に響く悲鳴。
地面に寝転ぶ客は、口から血を流し死んでいた。
誰もが思うだろう。
口にしていたハンバーガーが原因だと。
だが、真相は違った。犯人も、犯行方法も、誰もが驚く手法で――
……まぁ割愛するけど。
「で、それを偶然その店に居合わせていたイナリがパパッと解決したってわけだ」
「そう。そんな件でさっき駅二階にある交番から出て来たわけなんだけど、そうしたら、貴方達が居たってわけ」
「ほーん」
チラリと僕はイナリを見て、「な、なんだよ」と何故か焦る彼女に対し、
「事件が起きた場所に探偵が居たのか、探偵が居たから事件が起きたのか(ボソリ)」
「聞こえてんぞッ」
卵が先か鶏が先か。漫画、小説、ドラマ……様々な媒体で出てくる探偵という存在。
奴らは、必然的に事件の現場に居合わせ、宛ら死神のように死を引き寄せる存在である。
そして、この高校生探偵尾裂狐イナリもまた例外では無く、『何かしらの事件に巻き込まれる』という体質を備えているのだ。本人は『偶然だ』と言い張る上に『探偵活動』もやりたくないらしいけど。
「しかしまぁ、君の方も随分冷静だね。イナリと居ると死体も見慣れるもんかい?」
「別に冷静なつもりは無いけれど……見慣れてる、ってのは否定しないわ。イナリは関係無しにね」
言葉の意味を考え、それもそうかとすぐに納得。
生徒会長の実家はわりと有名な『神社』。神道の葬儀などもあるので、死に触れる機会が多いのだ。
――そんなこんなで僕らは話しつつ、行き先を近くのファッションビル内にあるケーキ&パスタ食べ放題なお店に変更。
土日なのでそれなりに混んでは居たが、何とか三人分の席は確保出来た。
「よっしゃっ、二人共早く食いもん取りに行った行ったっ、ここは戦場だぜッ」
「お、おい鋏、恥ずいって……周りは女ばっかなんだからそんな早く無くならねぇよ」
「その男は周りなんて気にしない奴よ、慣れときなさいイナリ」
「むっ、おいおい生徒会長様、随分と僕の事詳しいじゃないか。幼馴染かよ」
「似たようなもんでしょ、てかいい加減学園じゃないんだから名前で呼びなさい」
「さ、行こ行こ」
それから適当に選んだケーキやらパスタをテーブルまで運んで――途中「あ、かみさまー」と先程の幼女や母親と再会しつつ――椅子に座るなり、僕はフォークでズルズルバクバクとそれらを口に運ぶ。
「モッ。モモッモモモモモモ?」
「飲み込んでから話しなさい」
「ゴクッ。そういやこの先はどうする予定?」
「この先もついて来るつもり? 別にいいけど……元々、お昼食べたらこのビルで服でも見る予定だったわ。イナリが見たいって言うから」
アイスティーをストローで啜る生徒会長に、僕は首を傾げ、
「服ぅー? イナリちゃん、そんなの興味あるのぉー?」
「ちゃ、ちゃん付けすんなよ。別に、良いだろ、そういうのに興味持っても」
ムッとしたのか、イナリは皿の上にあるアップルパイを八つ当たり気味にグチャグチャに。(というか今更だけど、コイツら死体見た直後なのによくスイーツ食えるな)
「ふぅん……ま、確かにイナリは素材良いから可愛い服とか似合うかもねー」
途端、ブワッと熱を持ったみたいに顔を赤くするイナリ。狐耳がピコピコと荒ぶっている。
「あんたワザと言ってるでしょ」
と、横でよく分からない事を呟く生徒会長。まぁワザとだけど。
「よっしゃ、僕がダサいワンピースでも選んだげるよっ」
「そんなん着ねぇぞ!」
……ん? 不意に、僕は気付く。
周囲からチラチラと寄越される不鮮明な視線に。『騒いでて五月蝿いから』、では無いだろう。
「おいおい、お前らかわいこちゃん二人のせいで注目浴びてるよ。僕はその横に引っ付くお邪魔虫と思われて不快なんだが?」
「勝手について来といて酷い言い草だな……」
「それこそ貴方のお得意な被害妄想よ。注目されてるのは――三人だから」
なんだなんだ? それは僕もイケメンだって言いたいのか? このまま三人で芸能事務所にでもスカウトとかされちゃう? ……なんてね。『そういう縁』は面倒くさそうなんで既に『切って』おいてるんですけど。
「ったく。おいテメェら、『ジロジロ見てんじゃねぇ』」
ドスのきいたイナリの声に、バッと、皆の視線がそれた。ビビったから、というのは少し違う。
彼女には『他人に命令出来る』特技? 超能力? 異能? がある。
これのお陰で探偵業が捗る捗る。他にも『カサネには劣るが』鼻も良いし、『モガミには劣るが』読心術も探偵らしくずば抜けている。まぁ全部引っくるめてそこまで『大した力』だとは思わないけど。




