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▼ 探偵 ▲


モガミの部屋で一泊し、再び彼女が運転する車の中にて、プルルとスマホが震える。


『クッハー! やっぱたまんねぇよな? 最近転入して来た後輩の一年生名探偵、尾裂狐おさきイナリちゃんはっ。見た目はちっちゃくて可愛いヤンキーだけど、スッゲー頭がきれてて、前なんて体操着盗難を疑われた男子生徒をお得意の推理でスパッと助けたりしてな! そんな彼女を今市内の駅で見てるんだよ鋏っ!』


……いつこいつにアカウント教えたっけ? 正確には電話番号だけど。


『更には聞いて驚け!? あの生徒会長様も一緒に居るんだ! 性格はハッキリしててキツイ感じだけど男女共に人気のある頼れる美少女生徒会長様! これは両方に告るっきゃないだろ! 一人がダメでももう一人いる! 成功率は二分の一! 行くぜ!』


僕は返信する事なくスマホを閉じる。


「どうかしましたか」

「いんや。あ、それでごめん、行き先を市内の駅に変えて貰っていい? 知り合いが居るみたい」

「わかりました」


それから――駅へと到着した僕らは、駅ビルだったりをプラプラして時間を過ごし……


「うーん、意外と知り合いと出くわさないもんだなぁ」

「連絡すればいいじゃないですか」

「それはなんか運命的じゃないっていうか」

「なんですかそのこだわり」


と、その時だ。「みゃみゃ(まま)ー!!」


「ん?」


それは、駅構内を歩いている時の出来事。

反響する泣き声。大粒の涙をこぼす幼女。見て見ぬ振りで通り過ぎて行く大人達。

確かに今のご時世小さい子に声を掛けただけで通報されるらしいから仕方がないとは言え、これは可哀想である。


「迷子だろうねぇ。ほら先生、本領発揮だよ」

「そうですね。構内に交番がありますので、そこまで誘導しましょうか」

「それはかったるいなぁ。しゃあねぇ、これも何かの『縁』だ。『本気』出すか」


僕は幼女に歩み寄り、しゃがんで目線を合わせて、


「やぁお嬢ちゃん。ママをお探しかな?」

「ふぇ……? うん……ママが迷子になっちゃって……」

「物は言いようだなぁ」

「ぐすっ……あなたはだぁれ?」

「僕? 僕は『神様』さ」


「ふえええ」と驚く幼女。引かれないで良かった。


「よぅし、じゃあ君のママをここまで『引っ張って』来ようか」

「ふにゅ……? どうやって……?」 涙目で首を傾げる幼女の、その手を僕は握り、


「――ほら、見えるでしょ? 『君から伸びる糸』が。これは君とママとを繋ぐ縁、【縁糸】さ」


「えんしー?」


幼女には今、『銀色の糸』が見えている筈だ。

決して切れない銀の縁。


「さ、これをグルグル手繰り寄せるんだ。ママに会いたいって気持ちを込めてね」

「う、うん……!」


必死に、幼女は縁糸を引き寄せる。周囲の奇異な視線は気にしてもいない。僕は気にしてるけど。

――そうして、一分もしないうちに、


「わわっ!? なんだか、体が、勝手に……?」「あ! ママー!」


よろけながら姿を現した母親に、縁糸を離し飛び込む幼女。僕は立ち上がり、一息。


「お疲れ様でした」


労いの言葉をかけてくるモガミ。


「いやー、周りに通報されるんじゃないかとヒヤヒヤだったよ」

「貴方の容姿なら心配は無用かと思いますが」

「あ! ママ! このかみさまがママを引っ張ってくれたんだよー! ……あれー? 糸見えなくなったー?」

「もう、この子ったらよく分からない事を……、あの、ウチの娘の相手をして下さってありがとうございます」

「いえいえ。お嬢ちゃんこれからはママが迷子にならないようしっかり見とくんだよ?」

「うん!」


と幼女は元気に頷き、大きく手を振りながら去って行った。……あれ? そういえば何で僕ら駅に来たんだっけ?


「――相変わらずなお人好しね」「こいつ、いつもこんなんなのか?」


と。背後から、『聞き慣れた』声。

振り返った先に居たのは、二人の少女。


かたや、夜色の長髪を揺らす切れ目の美少女。フリルやリボンのあしらわれたガーリーな服装。

かたや、小柄な体とは対象的にパツンと張った胸部、狐色の長髪に『狐耳』のついたこれまた気の強そうな切れ目美少女。服装は、パーカーにスカートという飾りっ気のない動きやすそうな格好。彼女の名前もあいまって、まさに狐っ娘という風貌だ。


「モガミ、この後何か予定ある?」

「特に用事は無いのでこのまま帰るつもりですが」

「ちょっと鋏っ、何無視してんのよっ」

「ッッッ!!?? ま、まさか! 学園の現生徒会長様が僕に話し掛けて来るだなんて!?」

「毎度そういうのいいから」


生徒会長は呆れ顔だ。飽きる程に見慣れた呆れ顔。


「あー、思い出した。そういや二人が居るって聞いて駅まで何となく来たんだった」

「聞いた? 誰によ。もしかしてさっき私らにナンパしに来て言葉通り一蹴したやつ?」

「忘れた」

「ほんと適当に生きてるわね……」


さて、生徒会長様との絡みは十分だ。僕はもう一人の少女に目を向ける。


「それで、何でさっきからイナリは僕を睨んでるの?」

「っ……! に、睨んでねぇよ」と狐っ娘は目を逸らし、「な、何でウチの教師と居るのかって思っただけだ」

「ああ、昨日はモガミんちに遊び行って泊まったんだよ。激しい夜だったなぁ。ねっ」

「激辛中華料理の件ですか?」

「ななっ……!?」


口をワナワナさせるイナリ。どうしたのかな? (すっとぼけ)


「はぁ……戸沢先生。貴方、基本大学生とはいえ実習生の身でありながらよくもまぁ生徒会長の前で悪びれもせずそんな話が出来ますね。どんな事情であれ、生徒を、しかも男子を家に泊めるのはどうかと思いますが?」

「私はどうも思いませんが」


生徒会長の煽りを煽り返すモガミ。僕を争ってのいざこざと思うと悪い気はしないがモガミにはもっと『や、やましい事などありませんっ』みたいな感じでドギマギして欲しいものだ。休日の、学園の生徒も多く行き交う市内の駅だろうとシレッとしてるし。


「鋏さん。私、そろそろ帰りますね。では月曜の学校で」

「あっ、ちょ、まだ話は終わって……」


最後までマイペースなモガミは、そのまま僕らの前から去った。


「じゃ、そういう事で三人で遊ぼっか。お昼はまだ?」

「普通に混ざるつもりなのね……。お昼は、訳あってまだよ」


僕らは三人並んで歩き出す。目指すは駅一階にあるお洒落なハンバーガー店、だったのだが……


「あ、その店今はダメよ。『殺人事件』あったから」


え。


「なんだそりゃ、物騒な話だなぁ……って。もしかしてそれ、『イナリが原因』かい?」

「な、なんでもあたしの所為にすんなよっ」と狼狽えイナリだが、彼女にも思う所はあるのだろう。


――生徒会長曰く。二人がハンバーガー屋で腰を落ち着かせようとしていたその時、事件は起きたらしい。

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