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と。今まで隙の無かったロボットが、突然ガクリとバランスを崩したように揺れる。

同時に、普段は無機質な中の人の生々しい嬌声まで聞こえて来て……


『アクア! 一体何が!?』

『――ほほう、アクアプラスの中はこんな構造に(カシャシャ)。アレ? 僕の声、外まで聞こえてる?』

『ヤ、ヤメテクダサイ、サラサマ、ソコハッ』

『また貴方ですの白錆沙羅!』


どうやら空気も読まず、樒さんの弟こと沙羅さんがロボット内に潜入したようで、


「写真が撮りたかったんだろうなぁ」

「落ち着かない姉弟ね」


と、彼の女二人が同時に溜め息を吐かせた。


「でかした沙羅! そのまま中で遊んでろ!」


と、好機とばかりに飛び掛かる樒さん、だったが、


『ダ、ダメエエエ!!』


――カッと、周囲が一瞬眩い光に包まれたかと思うと――雨雲が消えた。

何があったのかとよく見れば、女性型ロボであるアクアプラスの両胸先端付近からプスプスと煙。

まさか、


「おぱいビームを搭載、だと? 樒っち間一髪だったねっ凄い威力だ!」

「天気を変えるぐらい出来なきゃ世界征服は夢物語よ」


と、いう事だ。一方、観客は晴天に喜んでいた。


『落ち着くのですわアクア! 白錆沙羅っ、それ以上おかしな行動を取ると許しませんわよ! さぁアクアっ、いつまでも足踏みせず迅速に首相官邸(――ガシッ)へ? アクア、何故わたくしを掴むんですの?』

『マ、マスター、カラダノジユウガ、キキマセン』

『な、なんですって!? 白錆沙羅っ、貴方また何か!』

『僕じゃないよ〜。あ、何かコクピットでフヨフヨ浮いてるこの蝙蝠の玩具、シロロさんのじゃない?』

『白銀シロロオオ!!』


――茶栗さんが叫ぶ中、シロロさんは此方にテヘペロと戯けた。


『アッアッ、マ、マスター、ワタシノデータガ、カキカエカキカキカエカキ(ビクンビクン)』

『おほぉ! 良いよ良いよアクアさんその脳内犯されてるような壊れた表情カシャカシャ!』

『ま、待ちなさい! 今修復作業を』


――その隙を見逃す樒さんでは無かった(例え今までが散々でも)。

彼女がロボの背中にドロップキックを入れると、緩やかに


「――あ!」


ロボが顔から観客側に向かって倒れて行く。

やはり散々だった。


「ちょ、折角私が乗っ取ったってのに余計な事するな馬鹿樒!」

『キャー!』『アバババ』『アッハッハ!』


シロロさんの怒号、茶栗さんや観客の悲鳴、アクアさんの壊れ声と沙羅さんの笑い声……良い具合に混沌として来た、その時――


「蜜任せた!」


樒さんの叫びと同時に、

群衆の中から一つの影が飛び出し、

ロボットを人の居ないステージ側へ蹴り飛ばした。


『ドンガラガッシャン』


とステージが盛大に崩壊し、ロボが動きを止める。

……今の衝撃、普通なら茶栗さんやロボの中に居た人達の被害は甚大だが……


『ちょっと! 離しなさい白錆沙羅!』


だが、姉とは違い決める時には決める沙羅さんだ、しっかりアクアさんと茶栗さんを両脇に抱え脱出を果たしていた。茶栗さんの顔面が、トマトのように赤い。


「ふう。取り敢えず一安心かな?」

「ええ、お客さんも拍手してるし、余興としては十分じゃ?」


と気を抜いているモノさんとシロロさん。しかし私の目には……もぬけの殻となったアクアプラスとそれに近寄る樒さんが『黒い縁糸』で繋がっているのが見えた。


ガシリ――ロボットが、樒さんをワシ掴む。

完全に意表を突かれた彼女は、


「お、おい茶栗! 何が起きたんだコレ!? グヌヌ……すげぇ力だ抜けらんねぇ!」

『こ、これはまさか『大輪心中モード』! いざという時に樒様と共に花と散る機能が誤作動を!』

「余計な真似を!」


と怒る樒さんの気持ちなど無視するようにロボはその巨体を素早く起こし、そのまま大空へと飛翔。グングン地上から離れて行く。


「ちょ、シロロっち! どうにかならない!?」

「厳しいわね。ウチの蝙蝠ちゃん達は既に帰還済みだし、第一に飛行速度では勝てないし。まぁ簡単に死ぬ樒では無いだろうけれど」


――そう言いつつも、不安気な表情を見せるシロロさん。


『あわわわ……一体どうすれば』

『マスター、ワタシガイッテ』

『ム、ムリですわアクア! あのモードに移行したら、幾ら貴方が飛行モードで追いついても制御が効かないんですの! 遠隔操作も受け付けないし……』

『まぁまぁ。落ち着きなよ二人とも』


と、茶栗さんのヘッドセットマイクに混じった沙羅さんの声色は、姉がピンチと思えない程の冷静さで、


『ヒロインが既に助けに向かったから』


沙羅さんの指差す方向は空。

『虹色の光』がロボを追い掛けている。

その速度はロボの上昇速度よりも上で、追いつけなくもなさそうだが……。


二つの影が太陽と重なった、その時――


『ドドンッッッ!!』


――巨大な花火が一輪咲いた。皆、息を飲む。果たして二人の現状は――


あっ! と、観客の誰かが声を上げる。


それに続くように二人三人と気付く人間が増えて行って、数秒後には全ての観客がワーワーとその方に手を振り出した。

フワフワと降りて来るのは、桜色髪をした蜜さんだ。頭の上で『ロボの手に掴まれたまま』の樒さんを掲げている。鋏と力を合わせ手だけを切断したのだろう。


因みに、二人が無事に帰還するのは何となく分かっていたから、私は焦らなかった。蜜さんには黒い縁糸など無いし、樒さんの黒い縁糸を鋏が切るであろう事は予測出来ていたし。

……本当だ。


「私達も下行こっか!」とモノさんに促され、三人でグラウンドまで行く。

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