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〈五〉
その後も、数件の家をまわって縁切巡をし、神社に戻った後本殿に鋏を戻す(形だけ)。そこで漸く午前の神事は一段落。午後の仕事までの時間、学園祭の方をモノさんと二人で覗く事に。
「いや〜学園の方も盛り上がってるねぇ」
とモノさんが言うように、金色ゴテゴテに装飾された校門を外部からの客がゾロゾロ出入りしている。
校長や学園長らのコネによる著名人ゲスト、各部活動が企画した頭のおかしい催し、出張竜宮城などの魅力的なイベント目当てに来ているのだろう。
お陰で同日開催の五色例祭にも人が流れ込み、結果的に私の仕事が増えたりと思う所もあるが、まぁ面倒事を同日に消化出来て都合が良いと考えよう。
「う〜ん、まだ空は曇ったままかぁ。お? 糸っち、校庭のあそこ、巨大ロボの足下のとこ見てみてよ。あそこが樒っちの居る〈校長打倒バトルロイヤル〉の舞台だよ」
とモノさんの指差す先には人集りがあり、その奥にはライブの出来そうなステージと巨大ディスプレイが。
「ステージ上に四台、ゲーセンのビデオゲームみたいな筐体があるでしょ? で、そこにバーチャルボーイ風なゴーグル着けて座る四人。どうもあのゴーグルには意識だけを仮想現実に跳ばせる機能があるらしくって……今のアニメによくあるじゃん、VRMMOってやつ? で、その様子があのディスプレイに映し出されてる」
とモノさんが言うように、画面上では見知った上級生同年生らが居て、何故か着物で百人一首をしていた。この様子もネット配信しているのか視聴者のコメントが流れている。
「あの空間に居る人達はランダムに決められたお題で競い合い、勝ち残った一人が上に行ける、てルールなわけさ。で、決勝まで行った子の『得意なお題』で校長と勝負して、勝てば校長が『お金で済む範囲なら何でも願いを叶える』ってご褒美付き。あのゴーグルを使えば、場所を取らずに勝負事を「――それだけでは無くってよ!」ぅおっ!?」
と。昨晩のサウナ同様唐突に私達の前に現れたのは、白衣姿の中等部生、茶栗さんだ。
「ビックリするでしょ茶栗ちゃんっ、今モノさんが君の作ったシステムの解説をしてた所なのにっ。……おや? いつも側に居るアクアちゃんは?」
「アクアは今ロボの調整を……って、そんな話はいいんですのっ。ふふん、わたくしの作った〈マロンシステム〉の補足に来たのですわっ。モノさんにはその事もキッチリ記事にして欲しいんですのっ」
「暇人だなぁ」
というモノさんの呟きは聞こえてない様子で、茶栗さんは語る語る。
「マロンシステム――これによって生まれた世界は、既に仮想現実の域を超えていますのっ。アバターは本人の身体能力に反映でき、更には疲労機能も搭載っ。場合によっては飛行や超能力も使用出来て……最早現実世界と、いえ、現実世界を超えましたわっ!」
「――流石茶栗さん。その若さで既に私の足下に届いてる」
「ひえ! し、白銀シロロ、貴方いつの間に!」
と後ずさる茶栗さん。どうも突然現れるのが最近の帝釈学園生のブームらしい。
「しかし茶栗さん。貴方が私に見せたかった成果って、まさか『あの程度』ではないわよね?」
「も、勿論ですわっ! マロンシステムは飽くまでわたくしの野望の下準備っ、本命はこれからですっ! 覚えてらっしゃい白銀シロロ! (ビシッ)」
と指差しを決めて場から去ろうとする茶栗さんに、
「あ、そういえば樒が探してたわよ。『アタシが初戦敗退とかありえねぇ!』と文句言いたげに」
「樒様あああああ!」
――叫びながら茶栗さんはステージの方に走って行った。
「あんな樒信者になっちゃって……いつだか暴走したアクアさんを、樒が止めたってだけなのにね」
「シロロっちは相変わらずのSだなぁ。てか、樒っちが初戦敗退てマジ?」
「ええ。この学園全体で見れば、樒の強さなんて下から数えた方が早いからね。頭も膂力も」
「銃弾を避けプロ格闘家ですら歯が立たない彼女がここでは噛ませ、か。本当にバケモン揃いだなぁ帝釈学園は」
なんてシミジミ頷くモノさん。……と、同時にあちらのバトルロイヤルも準決勝が終わった様子で。
「お、決勝前に休憩か。次って確か、その休憩中にライブするんだよね。糸っち、そろそろ屋上行こうよっ」
「何かありましたっけ?」
「……流石糸っちだなぁ。シロロっちも行く?」
「よく分からないけれど、暇だし付き合うわ」
――そんなこんなで、三人で校内へ。




