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自販機までの道、様々な人間とすれ違う。
白衣を着た女生徒が宙に浮かぶスケートボードで廊下を進んでいたり、それを青の髪色をしたアンドロイド? 女生徒が追い掛けていたり……
挙げればキリが無い程の濃ゆいメンツがこの学校に在籍しているのだと分かる。
比べて、女装してるだけの僕の薄さといったら。
自販機前に着き、数あるお茶の中からどれにしようかと吟味していると、
「この『ぷるるん』と書かれたやつが飲みたいぞっ」
「ゼリータイプかぁ、おじさんが買ってあげよう……って、君は昨日のお風呂の」
桜色髪少女がまた、いつの間にか隣に居た。この子急に現れるの好きだな。因みに今回はきちんと服――同じく桜色の甚平のような和服――を着ていた。
よく見れば、この子も糸さんと同じく赤青黄黒白の角度によって変わる五色の瞳。
買って上げた紙パックのジュースを渡すと
「これ、どう飲むんじゃ?」
と首を傾げる少女。……あまり、こういった類のジャンクフードは口にしない子なんだろうか。ストローの存在を知らないのは相当だと思うけれど、まぁ、色々あるのだろう。
思案を止め、ストローを刺してやり、飲み方を教える。
すぐに「おお! どぅるどぅる!」と大はしゃぎ。
自販機向かいのベンチに二人で座る。座るとは言ったが少女が座るのは僕の脚の間(股間)である。足をパタパタさせる少女可愛い。
「見た所君、高校生には見えないけれど、自分の学校はいいの?」
「学舎には通っとらんからな。そもそも神社から出るのも久方ぶりじゃし」
おおぅ、予想以上にヘビーな境遇を過ごして来た様だ。病弱で外に出られなかった? それとも、訳があって座敷牢に隔離されていた?
今僕は、五色神社の触れてはならぬ〈闇〉と共にしているのやもしれん(興奮)。
「ハフゥ。しかし漸く二人きりになれたな。神社を出てからお前、全然一人にならんくって」
後頭部を僕の胸に預けつつ、唇を尖らす少女。……この言い方だと、ずうっと僕の後をついて来てた、と? 気配なんて無かったのに。まさか……kunoichi!
「僕だって困惑してるんだよ、いきなりこんな構われてさ。今までずうっと一人だったから」
「境遇は一緒じゃの」
言って、少女はクルリと回り、僕と向かい合う。首に腕を回して来て、それから、
「でも。これからは一緒じゃ」
『チュ』っと、唇を押し付けて来た。
まさかの! 人生初チッス相手がまさかの名前も知らぬ少女! ピンク髪が助平という情報は真であったか!
仄かなオレンジゼリーの味。
「なにあれカワイ~」「姉妹?」「姉妹百合……イイネ……」
道行く生徒の生温かい視線。仄かな青春の味。
何故この少女が僕にここまでの好意を示してくれるのか。それは――意外に早く判明する。
『キンコンカーン』「ぷはぁ……はぁ」
昼休みが終わるチャイムと同時に少女は唇を離す。濃厚なチュッチュタイムだった。
「邪魔が入ったの。この程度ではまだ空いた時間を埋めるには足りな過ぎるが、まぁ、慣らしも必要じゃしな」
火照った頬でサラリと。コレだけやっても足りないと申すか。最近の中学生? は大胆。
「言いたい事は一点だけじゃ。浮気はするなよ」
そうして、ガブリ、甘噛みして来た。
痕をつけるようなその行為が、まるでマーキングのようで――
「――なにをやってるんですか、蜜さん」
「あれ?」
唐突に出現した糸さん、唐突に消失した少女。
「いつから居たんすか?」
「今来たばかりです。いつまでもお茶を持って来ないから……一人でジュースですか?」
彼女の視線は僕の股間――の所にポツンとある紙パックゼリー飲料。
「や。お茶を買いに来たつもりが謎の少女に大切なモノを貰ったというか奪われたというか」
「良くわからない事を。もしや、中等部の子に手を出して?」
蔑むような目。いらぬを顰蹙を買ってしまったようだ。瞬き一つする間にドロンと消えていた少女。アレは幻だったか、本当にくノ一だったか。でも、この体に残る温もりと、唇に残る歯型のような違和感は……
「何はともあれ、昼休みは終わりました。今から向かうは教室でなく次の授業の場所ですよ。急いで下さい」
そうしてポイっと渡されたのは……体操着袋。
先の展開が、容易に想像出来た。




