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〈四〉


「ハイハイみんな起きるニャ〜(パンパン)」


手を叩く音に、ボンヤリとだが意識が覚醒していく。障子から漏れる朝の陽射しと反射する埃。……今、体中が少々窮屈な理由を、私はすぐに思い出す。


「んぁ? ふぁ、もう朝か……あったけぇ……って! い、いつの間にアタシは蜜の浴衣に手ぇ突っ込んで!?」「っぁん……お兄ちゃんたら私のおっぱいに顔を押し付けて、甘えん坊……って鋏さん!? お兄ちゃんのそこに顔を押し付けるのやめて下さい!」「ムニャムニャ、蜜の成長チェックは鋏の仕事じゃあ……」


昨晩、客間にいくつもの布団を敷いて皆で寝る事で齎された結果が、この騒がしい朝の光景だ。……さり気なく蜜さんの手が私の胸を鷲掴みにしているが、偶然、ではなく故意だろう。

そんな現状に、私達を起こしに来た『猫耳割烹着幼女』こと帝釈学園創設者の【ぽおる理事長】が「本当に今日大丈夫ニャア?」と息を吐いた。

……一0分後、布団を片付け座敷へと集まる面々。既に長机には人数分の朝食が用意されていた。沙羅さんや卯月さん達は先に起き準備をしてくれたようで、


「何もせず何寝惚けてんだお前は」と早速説教する沙羅さんに「面目ねぇ」と樒さんが猫耳&尾をへたらす。

「まぁまぁ、沙羅坊もそれくらいにするニャア。今日は祝いの日なんだからさ」

「そんな日にな〜んでお前が来てるピョ〜ン?」

「ア? それはこっちの台詞ニャ。理事長が学園祭に来るのは普通ニャ」


と睨み合うウサ耳幼女と猫耳幼女。可愛らしい光景なのに危機感を覚えるのは何故か。


「はいはい皆さん座りましたかぁ? 食べながらで良いので聞いて下さい、本日の五色例祭の流れを確認しまぁす。まず午前中、九時から帝釈学園生徒さんによる模擬店販売開始、一0時半より境内中央にて〈五色神楽〉、一一時より〈縁切巡えんきりめぐり〉を。それから休憩を挟みお昼過ぎ、帝釈学園グラウンドで――」


母さんの口から発せられるのは、例年以上のハードスケジュール。それでも皆『何て事無い』というような様子で朝食を口にしている。基本、心臓に毛の生えた精鋭達だ、プレッシャーとは無縁なのかも。


「それで、まず最初の五色神楽のリハーサルだけれど……まぁ、要らないでしょう。昨夜、急遽『理事長の要望』で追加された神事にも関わらず、皆一回で合わせられたので。愉しんでやって下さい」

「久し振りだから張り切るニャ〜。昔は良くやってたのにここ半世紀はめっきりだったからね」


とポキポキ指を鳴らす年齢不詳なぽおる理事長。


――昨夜の。五色神社に佇んでいたライオン……のような巨大ネコ科生物は理事長自身だった。何でも乙女校長から祭りの話を聞いた彼女は、我々を驚かせる為に着ぐるみ――異様にリアルな質感と雰囲気を纏っていたが――を着て待っていたのだと。


意気揚々と縷々子さんに飛び掛かった理事長。だが『唯一動いた』蜜さんに『ドロップキックで蹴り飛ばされ』神社の裏に消える。数秒後、理事長が笑いながら再び現れネタバラシ、という流れだった。

理事長である彼女だが、学園には滅多に顔を出さず、普段は沙羅さん樒さんシロロさんの生まれ故郷である猫島(電車で一時間船で一時間掛かる)に居るらしい。蜜さんが学園長と初めて会ったのも、樒さんらに連れられた猫島で、なのだと。相変わらず、蜜さんの縁糸は予想の出来ない生え方をする。


「ぼおるさんご飯お代わり下さいっ」

「縷々子ちゃんは本当によく食べるニャア。……ぅぅん、やっぱり君とは何処かで会った気が?」

「私『は』記憶にないですねぇ」

「(ガララッ)おはよ〜ございま〜す!」


と。玄関の方からテンションの高い少女の声が。そういえば、モノさんが朝から取材に来ると言っていた気が。丁度朝食を食べ終えた私は対応をする為腰を上げる。他の面々はまだまだご飯を食べるのに忙しいようだ。




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