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「――あれっ? もしかして、卯月様ですっ?」
と。住居から一人出て来た縷々子さんが、ハッキリと幼女の名を口にした。
「おおぅ縷々子っ、久し振りピョン。まさかここで会うとは思わなかったウサッ」
「先週からここでバイトしてるんですよっ」
抱き付き、今時の女子のようにキャーキャーはしゃぐ二人。蜜さんの親戚ならば、必然的に縷々子さんの親戚でもあるから、面識があるのは分かるけれど……
「あ、糸さん、この方は私の親戚でもあり、極悪ヤクザ一族〈因幡一家〉の長でもある卯月様です。卯月様、どうして五色神社に?」
「因幡一家は健全ピョン!? ……お祭があると聞いて、挨拶に来たウサ。この家でお世話になってる蜜とは、昔からの仲だから」
「えーっ! お兄ちゃんと知り合いだったんですか! もうっ、なら紹介して下さいよっ、私なんて先週知り合ったばかりなのにっ」
「お兄、ちゃん?」
「はい! 好きに呼んで良いそうなので、色々あって!」
「……そっか。紹介の件は、うん、すまなかったウサねぇ」と卯月さんは苦笑する。
「――むっ! 雌ウサギめっ、何故居る!」
と叫ぶ鋏(ノーマルver)を筆頭に出て来る他の面々。
「あ、卯月さんだ」「久し振りピョン蜜!」
抱きつき、今時の女子のようにキャーキャーとはしゃぐ二人。さっき同じ光景を見た。
そのままの勢いで、卯月さんも銭湯へと同行する流れに。木天蓼荘組と神社組、加えて卯月さんにマッチョ集団を加えると、一0人以上の大所帯がゾロゾロと田舎の歩道を歩く光景が出来上がった。
歩きつつ会話を聞いていると、どうも白錆姉弟らもひと月前の研修旅行で【ウサギ島】にて卯月さんと顔見知りになったようだ。
見れば、この人と蜜さんは縁で繋がっている。色は【青】。
先程卯月さんは縷々子さんに『蜜とは昔からの仲』だと言ったが、その言葉に偽りは無かった。殆どが彼を認識出来ない世界で、この人は彼を見ていられたのだ。ならば既に、蜜さんからも真実を聞かされた筈。五色神社の事も、鋏の事も、恐らく私の事も。
そうなると一つの違和感が顔を出す。卯月さんが自身を蜜さんの『親戚』ではなく『昔からの仲』と縷々子さんに話した意味だ。単純に考えれば、蜜さんと同じく『残酷な真実を伝えない為に』だろうが……
どうも、私自身が重大な【真実】を見落としている気がして――
不意に――蜜さんの隣に居た卯月さんが振り返り、後ろに居る私を見た。
「見え過ぎるのも考えものウサね、お互い」
……、やはり、どうにもやり辛い人だ。




