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〈二〉
翌日、月曜日。
因幡家で朝食を頂いた後は、蜜母さんから五色神社へと送って貰い……
時間は進んで学校、昼食時。
「てかさ。そもそも五色例祭って何するの?」
自販機前のベンチにて蜜さんと紙パック片手に会話してると、彼がそんな事を口にした。
「今更ではないですか? 一週間前ですよ」
「だって僕は歌って踊るだけの事しか知らないし。ママさんは『簡単な役割しか回さないから』って言うだけだし」
母さんめ、蜜さんには『最も重大な仕事』をさせるつもりの癖に、説明してないのか。確かに、その仕事自体は簡単な作業だが……
「例祭ってさ、基本、神様をを喜ばせる事が目的なわけでしょ?」
「そうですね。他では『相撲、神楽、獅子舞、流鏑馬、神輿』……まぁそんな感じで」
「とても鋏が喜ぶ内容じゃなさそうだけど」
「でしょうね。だからそのラインナップはウチではやりません」
アレでも鋏はウチの神だ。ひと月共に過ごして、アイツが形式に囚われた祭事に歓喜する性格でないのは把握済み。だから母さんは、神聖な祭りにそぐわない無茶な企画をいくつか画策しているようで……
「話は聞かせて貰った。ウチも協力しよう」
と。音も無く目の前に現れたのは、我が校で一番落ち着きのない人、乙女校長だ。
「どうしたんですか藪から棒に」
「五色例祭を賑やかな祭礼へとしたいのだろう? なら、帝釈学園とコラボしよう」
「具体的には?」
と訊いた私だが、既に不穏な空気を感じとっていた。
「来月予定だった学園祭を来週の五色例祭当日に持って来るんだよ」
予感的中だ。……その後、
「無理があるのでは?」
と無駄と確信しつつ校長を説得するも、
「これに対応出来ない生徒は居ないよ」
と案の定笑われて、
「さてさて【学園長】にも言っとかなきゃ。じゃ、君のママには私から言っとくねぇ」
とヒラヒラ手を振りながら校長は去った。
こんな急な変更、いくら校長が母さんと友人だからって通るわけ……あるんだろうな。悪い意味で気が合うから友人になれるんだろうし。
「(フキフキ)ん、なにかあったのか?」
と、鋏(幼女版)が濡れ手をハンカチで拭きつつトイレから戻って来た。
「どうすれば鋏をお祭で愉しませられるかって話をしてたんだよ」
「ほほっ。して、ぐたいてきには?」
「内緒」
と唇に指を添える蜜さんに、
「ええぃじらしじょうずめ! こうしてくれるっ(チュチュペロペロヌラヌララレラレネルネルネルネ)」
ガバッと鋏は襲い掛かった。……本当にこの疫病神は……一日一回、適当な理由をつけては彼を辱めないと気が済まぬらしい。……何だ、そのこっちを見るドヤ顔は。
「ぷはっ。んもぅ、トイレ行った後だってのに、ばっちィなぁ」
ピシリとチョップする蜜さんに「むしろごほうびじゃろうに」と気持ち悪い笑顔で返す鋏。この下りの描写、必要無かったな。
――その後、昼休憩後の授業は急遽学園祭の話し合いへと差し変わった。
担任の尾裂狐先生の『急に仕事が増えてイライラしてる』感な口調からの発表に、クラスメイトらは一瞬ざわつくも、『まぁどうにかなるだろ』と一瞬で落ち着きを取り戻す。優秀な人達だ。
元々特にやりたい出し物など無かった我がクラスは――私と蜜さんが五色神社の人間というのもあったか――五色例祭の手伝いをする事に決まった。人手が増えて母さんも狂喜するだろう。
それからの 一週間 はあっという間で……気付けば、二つの祭の本番を前日に控えていた。




