表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/151

57

「ある日をキッカケに親子の縁が切れた僕と因幡家だけれど、完全に僕が『居ない者扱い』ってワケでは無かったんだ」


蜜さんの話によると、その後も蜜母さんは彼の分の食事も作り、洗濯物も洗い、服も買ったりしてくれたらしい。但し、因幡家の人間にその行動をおかしいと思う自覚は無くって――


「結局母さんは最後まで僕の存在を認識出来なかったけれど、それでも身の回りの事は全てやってくれていた。服は『似合うから』と昔と同じように女物を成長に合わせて用意されたし、その女子制服も同じ理由で取り寄せたんだろうけど……。不思議だよね、こんなケースは滅多に無いと、鋏も言ってたよ」


蜜さんが『鋏のパートナーの生まれ変わり』だから因幡家に鋏の力の耐性が僅かにあったのか、家族の絆とかいう謎のご都合主義か……本来【青か赤の縁糸】を持たぬ者で無い限り起きない現象に近い。

しかし結果的に、そんな中途半端に優しいご都合のお陰で、彼は完全には歪まなかった。


「だから、前にも言ったように僕は君が思う程【悲劇のヒロイン】でも無いんだ。振り返って見れば、小学も中学も少しだけこっちの高校も、ただボッチで過ごしただけの男だよ。そうやって、根暗な僕が出来た」


彼の話は簡潔に終わった。この話をしたのは私で【二人目】らしい。先に聞いたのは誰なのだろうと思いつつ、頭の中では【あの女性】が浮かんでいた。


「しっかしなぁ。鋏から聞いて覚悟はしてたけど、予想以上にクるもんだね。『再び縁が繋がっても、前の記憶は無い』……無視されるよりも、リバーブローのようにジワジワ効いて来る」


珍しく弱音を吐く蜜さん。彼の言う通り、全て都合が良いワケではない。これは彼が五色神社に来て二日目の朝、寺大工三兄弟関連でも確認した現象だ。

だが。思い出を忘れられては居るが、因幡家の二人からは蜜さんに対して『特別な思い』を感じる。すぐにファンになったというのもソレだ。〈血縁〉はどうあっても切れない。抜け道があるならばソコだ。それが、彼にとって喜ばしい事なのかそうで無いのかは、彼にしか分からないが。


「でも、引っくるめて見れば今は満たされてる。感謝してるんだよ? 大体が五色家の、糸さんのお陰だから」

「っ……、やめてください」


――唐突な言葉に、目頭が熱くなってくる。感謝はやめて欲しい。

私はあの日神社で、蜜さんを見捨てたのだ。私が逃げなければ、蜜さんの今は変わっていた。縁糸で私と繋がっていたにせよ、別の形で出会っていた筈。非難されこそすれ、感謝される資格などないのに。


「いやぁ漸く言えたよ、感謝。……ふぁぁ。ちょっとだけ……五分、経ったら起こして」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ