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その日の夕方、縷々子さんが(結局採用され)アルバイト説明の為に五色神社へと再び来た。
彼女は地頭が良い為か、仕事内容を覚えるのが早く、一時間程で立派な巫女へと早変わり。その後は、五色例祭へ向け、エリンギジンジャーの新メンバーとしての説明も受けていた。運動神経も良いようで、ダンスや歌も一目でマスター、一週間後の本番には余裕で間に合いそうだ。
――そうして、今は一九時前。縷々子さんを駅まで送ってやる事に。
「本当にすいませんっ」と歩きながら頭を下げる彼女に、
「だから気にするな、駅まで近いしな」と柔らかい態度の鋏。蜜さんの妹だからなのか、受け入れるのも早い。
一方、その兄である蜜さんだが、先程から妹さんと一言も会話していない。縷々子さん自身も、彼をチラチラ見るばかりで……けれど、それも仕方が無いのである。
今の彼女にとって、蜜さんは『ひと月振りに会った兄』ではなく、気安く話し掛けられない『今日初めて会った気になる男性』なのだ。
結局、微妙な空気のまま駅まで着く。
「それでは縷々子さん、また明日、今後についての話がありますので神社の方に」
「はい……、……あ、あの!」と、去ろうとした私達を引き止める彼女。
「あの! よければウチに来ませんか!?」
十数分後、私達は車に乗っていた。運転するのは縷々子さんの【母親】で、そして同時に、蜜さんの【母親】でもある女性。
鋏の奴、ただ蜜さんの家が見たいという理由で縷々子さんに二つ返事をしたのだろう。断るという選択の余裕すら無く、迎えの車はすぐに駅まで来た。
蜜さんにとっては、ひと月振りの帰宅。今の彼の心中はいかに。
「改めてごめんなさいね五色神社の皆さん、ウチの娘の我儘でこんな事に」
「いえ」と小さく首を振る私。ルームミラーにうつる蜜母さんは、昼にケーキバイキング屋で縷々子さんの隣に居た人でもある。
ただの友人と思っていたのに、母親だったとは。若過ぎる見た目ではあるけど、何故あの時、この人も縷々子さんと同じ女子制服を着ていたのか。
「皆さんは今日、我が家にお泊まりに?」「お母さん!?」「そのつもりじゃが?」
鋏め、明日は月曜なのに勝手な返事を……第一、着替えも用意してないのに。
「じゃ、じゃあ蜜さんにも糸さんにも私の服を貸します! サイズ的に大丈夫かと!」
まぁ確かに〈サイズ〉は似たようなモノだが……蜜さん、無言で胸元を見比べないで欲しい。
流石にもう遠慮出来るタイミングは過ぎてしまった。とりあえず、母さんに連絡入れておこう。




