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面接が終わってすぐ、


「そんなわけで悪いけど、ちょっとこれ注文して来てくんない?」


母さんから再び頼み事を押し付けられた。


「何故また私が……というか一週間前に祭の備品注文ってどういう事ですか。それに早起きした分と面接の疲れで、今すぐ寝たいんですけど」

「引き続き母さん忙しいのよ。ちょっとした小物だから顔が利く神具店なら嫌な顔されないわよ。【コレ】あげるから、蜜ちゃんと二人で行って来てよ」


渡されたのは二枚の紙切れ。


「……、鋏も着いてくると思うんですがそれは」

「お、やる気出た? 大丈夫、母さん上手く引き止めるからっ。じゃあ宜しくね〜」


ヒラヒラと手を振りながら去る母さん。ニヤけた顔が腹立たしい。それでも頼みを引き受けてしまった私は、蜜さんの所に向かう。

――全く、母さんは誤解している。どうもあの人は蜜さんと私を引き合わせたいらしいが……。確かに、この一ヶ月間蜜さんと過ごしてみての私の彼に対する印象は悪くない。生意気になって来た部分もあるが、それも『家族として』見れば、愛らしくさえある。

だが。色だの恋だの、私の彼に対する思いはそんな単純なものではない。私は今後も、彼を支えて行く事しかしないし、出来ない。

いや、支えるなんて上から目線では駄目だ。私は、彼に『償わなければ』「糸さん?」

声を掛けられ、思考が止まる。視線の先には、サザンカの花の側でしゃがんでウサギと戯れる、巫女姿の蜜さんが。いつの間にやら境内隅の方の彼の元に辿り着いていたようだ。


「面接終わったんだね。良さそうな子いた?」

「どうでしょうかね。……ここに居て誰も見てないんですか? 面接相手の女性」

「うん、今来たばかりだからさ。どんな子が採用されるか楽しみにしてるよ」


蜜さんの言葉を聞いて、少し安心する私。帰り際の三つ編み少女が彼と邂逅していたら、『ファンになった』と騒いで……いや……安心した理由は、本当にこれだろうか? 自分でもよく分からない。

思えば、結局彼女の名前も連絡先も訊き忘れていたな。母さんが知ってるだろうか? でなければ合否の連絡も出来やしない。まぁ、明日勝手に来るか。


「しかし、ここも随分とウサギ神社として認識されて来たね」


言いながら蜜さんは、「クークー」と甘えた鳴き声をあげるウサギらのお腹を撫でる。


「確かに、それで親子連れの参拝客は増えましたけど、縁切り神社成分はどんどん薄くなっていってますね。母さんは上手く商売に繋げましたが」


今度シルバニ○ファミリーとのコラボで【赤い屋根の大きな兎神社】を出せるように交渉するとかしないとか。


「やぁ面目ない」


と苦笑する蜜さん。彼曰く、どうも自身は『ウサギを引き寄せる体質の一族』で、それでこの現状になったのだと。

実際、ここのウサギらは蜜さん以外には懐かない。子供の場合のみ『まぁ許してやる』とふてぶてしく撫でられているが、中学生以上の男女が来た場合は、睨むか走り去るかのどちらかだ。蜜さんが来た時だけ、いつも敷地内に分散している癖にすぐに集まり出す。嘘か本当か『会話も出来る』のだと。

その体質について分かったのが、数週間前の研修旅行で、らしいが……蜜さんは、必要以上に語らない。自身の事も、【彼女】と急接近した経緯も。


「しかしもっとこう、僕としては縁切り神社に住むからには厄介なお客様がゾロゾロ来て、切ったり繋げたりと異能バトルな非日常を送るものだとばかり思っていたのに、このひと月特に何も無かったね」

「そういった厄介な縁は鋏が独断で切っているのでしょう。何よりも貴方との時間を第一にしてますから」

「う〜む、感謝すべきなんだろう。……あ、そいえば何か僕に用があったんじゃ?」


頷いた私が母さんからの頼み事の件を伝えると、彼はすぐに了承し腰を上げた。至福の時を邪魔されたウサギら(全て雌)からは「グーグー」と批判殺到だが、いつもの事なので気にしない。


「乳巫女! 根暗乳! オッパイニート! だってさ」

「翻訳しないでいいです」

「お、蜜、何処ぞに出掛け「鋏様、この後衣装合わせですよ」な、なんじゃいきなり!? ハナセー」


ズルズルと母さんに引き摺られていく鋏の断末魔を聞き届けた後、私と蜜さんは神社を後にした。


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